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【法政研】沖縄法政研究所 第89回研究会を開催いたしました 

法政研
沖縄法政研究所では、12月20日(金)に第89回研究会を開催いたました、その様子をご報告いたします。
年末ご多忙の中、ご参加いただいた皆様、ご報告者の先生方どうもありがとうございました。

「Yナンバーとの交通事故」
報告者:清水太郎 沖縄法政研究所特別研究員/清和大学法学部法律学科准教授
    廣見正行 神戸市外国語大学外国語学部国際関係学科准教授
報告概要
毎日新聞社の「特権を問う」という記事は、日米地位協定が生んだ様々な問題点をシリーズで報道するものである。
その中の「『Yナンバーに気をつけろ』沖縄移住の女性が体験した『基地の島』の現実とは?」は、Yナンバーと呼ばれる米軍車両との交通事故の補償について問題となった裁判所とその問題点を報道するものである。
本報告は、上記で問題となった2件の裁判例を参照しつつ、Yナンバーとの交通事故における法的問題点を、保険法(清水)および国際法(廣見)の観点から分析し、既存の法体系で被害者が補償を得るためにはどうしたらよいかを検討することを目的とする。

報告者のお二人
清水太郎氏の写真廣見正行氏の写真
    清水太郎 氏       廣見正行 氏
   清和大学 准教授   神戸市外国語大学 准教授

    報告中の様子        司会・コメンテーター
報告者お二人の写真比屋定所長の写真
                  比屋定泰治
                沖縄法政研究所所長

ご報告では交通事故の被害者が原告となり被告の加害者米兵を訴えたが、被告が所在不明となったため、欠席裁判となったこと。判決は被害者の主張が認められ過失割合0:100で損害賠償額も確定したものの被告が所在不明なため被害者は加害者が加入していた損害保険会社に保険請求を行う新たな訴訟を起こしたこと。裁判所は損害保険会社に先の裁判で確定した損害賠償額を被害者に支払うようにとの判決であったとの裁判事例から
国際法の視点から米軍人又は軍属が起こした事件・事故の刑事責任は、日米地位協定が適用されること。
民事責任においても同様に日米地位協定が適用されるが、誰が損害賠償を行うべきかについては、公務執行中か否かによって異なることを沖縄県の「米軍による事件・事故等に対する補償制度」中の資料「合衆国軍隊等の行為等による被害者等に対する賠償金・慰謝料の支払いについて」も用いて解説されました。
また、保険法の視点から被害者が補償を得るための方法として、被害者側の保険を使う場合、加害者側の保険を使う場合、任意自動車保険から救済を得る場合の、それぞれの課題が示されたほか、日米地位協定上の民事請求手続きは被害者が損害発生から2年以内に提起しないと時効になってしまう、一方保険法上の保険請求権の時効は3年であり、それを超えた場合は加害者本人に対して損害賠償請求をする方法がある(この場合消滅時効は5~20年)が加害者が所在不明であるこのケースでは後者の実効性が無いので、被害者が損害保険会社に保険金を請求したことは適切であったと結んでおられました。

質疑応答の様子
質疑応答中の写真

参加者アンケートから
・地域の問題に密着した意義深い研究会であったと存じます。
・沖縄ではYナンバーとの交通事故は日常的に起きていますが、その際の対応についてはほとんど知られていないので、今日の研究会は非常に有意義な報告でした。ありがとうございます。