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【卒業生特集】映画『木の上の軍隊』平 一紘監督インタビュー

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6月13日(金)から沖縄先行上映中の『木の上の軍隊』の映画監督平一紘さんに取材を行いました。

平一紘(たいらかずひろ)さんは、本学日本文化学科(2011年度卒)出身です。
こまつ座の舞台作品を映画化することになったきっかけや、沖縄出身の映画監督として、沖縄戦を題材にした映画をどのように制作していったのか、お話をお伺いしました。

Q沖縄完成披露試写会(5月23日)で、上映前の舞台挨拶を行われましたが、会場の雰囲気はどうでしたか。
ワールドプレミアということで、非常に印象に残りました。上映会には主演お二人にも参加してもらいましたが、当日は様々な年齢の方に来ていただき、絶対に観てもらいたい若い世代にも届いていたと思います。
戦争を描いた作品というと、戦争を知らない若い世代の人たちは堅苦しい印象を持ってしまい、なかなか見てくれないと思いますが、主人公たちのユーモラスな掛け合いなど、エンタメ作品としてご覧いただいて、2人の男の生き様を感じてほしいです。

Qこの作品を撮影するきっかけを教えてください。
自作品の『琉球トラウマナイト』からの長い付き合いのプロデューサーから、『木の上の軍隊』という舞台作品で沖縄戦をテーマにした映画を作ってみないかと話を頂きました。
今回、この作品を作るにあたって、「沖縄出身の監督や制作チームが沖縄戦を描いた映画はこれまでなかった」というプロデューサーの声もあり、挑戦することにしました。
舞台では、木の上から物語がスタートしますが、主人公の二人が木の上に辿り着くまでにどういった経緯があったのか、そしてどういった人物なのかを知ってもらうために映画の前半部分には舞台では描かれなかった場面を脚色しました。登場人物たちに感情移入してもらえるシーンになっていたらうれしいです。

Qこれまで自主映画や「ミラクルシティコザ」で沖縄を舞台に作品を作ってこられましたが、沖縄戦を題材に作品を作る緊張感はありましたか。
もちろん、この題材をもとに映画を作ることには葛藤や緊張もありました。
沖縄戦のことは、慰霊の日などで触れてきましたし、身近な人たちが戦争で被害を受けていますので、気軽には触れられない題材ではないかと思い、自作品で制作することは考えたことはありませんでした。
プロデューサーから提案のあった『木の上の軍隊』が舞台作品ということは知っていましたが、この話を頂いてから、初めて舞台作品の映像資料を拝見しました。
映像資料を通して、舞台の大きなエネルギーを感じ、嘘の無い映像を作らないといけないと考えるようになりました。
そのためにも、伊江島戦に関する資料にはできる限り目を通したり、戦争体験者に取材を行うなど、事前準備も行ってきました。
映画化するにあたり、CGではない嘘のない映像にしたいという想いで、自然豊かな伊江島で1か月近くオールロケを行いました。特に二人の隠れ家となる大きなガジュマルの上で撮影するにあたり、様々な方のご協力を得て、伊江島の公園にセットを組んで、実物のガジュマルの木の上で撮影を行うことが出来ました。
隠れ家である樹上の撮影は非常に難しく、撮影のために抜き差しできる可動式の枝を使用して、寄りの撮影時にはその枝を抜き、クレーンでカメラが入れるように工夫して、リアリティを出すことができました。


                   平一紘監督(日本文化学科卒業生)


Q舞台作品を映画化するにあたり、どういったことを大切にしましたか。
まずは、リスペクトをもって、この舞台作品を映画化したいと思いました。そのためにも、どのような脚本にするかいろいろと悩んでいましたが、この作品は戦争を題材にしていますが、人間の葛藤や価値観のぶつかり合いを描いた作品だと捉えなおした時に、映画の構想を考えることができました。
また、主人公である上官=本土、新兵=沖縄という意味にも捉えられる作品であり、人間の葛藤だけではなく、沖縄が抱えている葛藤を描いている作品でもあると思います。

Q主演の山田裕貴さんのインスタで、監督と仲の良い雰囲気が伝わってきましたが、現場の雰囲気はどうでしたか。
現場の雰囲気はとても良かったです。キャスト、スタッフともに仲良くさせてもらいました。主演のお二人は気さくな方々で、現場のみんなとコミュニケーションをとってくれて、とても話しやすい雰囲気でした。山田裕貴さんと私は同世代なので、お互いに興味のある話も多くさせてもらいましたが、現場に到着した車のドアが開いた瞬間から役に入っていたり、役作りのために食事を控えたり、高いプロ意識をもって取り組んでくれました。
また、プロデューサーとも話をしていましたが、県内キャストの方々には、普段は触れることが出来ない一流の俳優の演技や撮影現場の空気感を味わってもらいたい想いで、現場スタッフとしても参加してもらいました。なかなかこういった機会は沖縄では少ないと思います。

Qこれから沖縄を皮切りに全国で上映されていきます。特に若い世代に観てほしいという想いがあるかと思いますが、メッセージをお願いします。
この作品は必ずしも楽しい内容ではありませんが、重苦しくなく受け止めてもらうために、エンターテインメント作品として作りました。まずは主人公たちの会話や表情から生まれるユーモアだったり、二人が築いていく親子のような関係性を通して、この沖縄で起きたことに目を向けてもらい、2人が生きるために葛藤する姿を見てほしいと思います。

―平監督の学生時代や新卒時のこと、沖国大生へのメッセージを伺うことが出来ました。
学生時代は放送研究部の一員として、全国大会で優勝を経験したこともあり、沖縄にいても全国で戦えるという自信に繋がりました。また、在学中から、ハリウッド映画を撮りたいとかカンヌに行きたいなど周りと話をしていましたが、現在は少しずつ夢が実現していることを実感しています。また、就職活動では県内企業数社にも内定を頂きましたが、卒業後は株式会社リウボウインダストリーに就職しました。自主映画を撮りながら働き続けていましたが、ある時、当時の糸数剛一社長(現代表取締役会長)と話す機会があり、どこかのタイミングで退社して映画を撮りたいと伝えた際、「今すぐ辞めなさい」と言われました。糸数社長の発言は、私のこれまでの自主映画を観てくださっていて、「面白いから専念しなさい」という意味でした。その言葉に後押しされて、退社後は映画監督を続けることが出来ています。今でも様々なバックアップをしてくださり、尊敬できる社会人の一人です。
映画監督を続けてこられたことは、これまで人の縁に恵まれていたことがとても大きいです。みなさんが良く言う言葉だと思いますが、本当にその通りだと思います。
学生のみなさんには、若いうちにやりたいことが出来たら、周りにそのことを伝えて欲しいと思います。夢を叶えたくて動いていると誰かが縁を引き寄せてくれます。私もそうでしたし、それが叶えられていると思いますので、ぜひ実践してもらいたいです。


               映画『木の上の軍隊』(6月13日沖縄先行公開)

『木の上の軍隊』は絶賛公開中です。ぜひ、監督の想いが詰まった映画をご覧ください。
平一紘監督のこれからの活躍を期待しています!

お知らせ:
本作品は、本学卒業生・平一紘氏が監督を務めた作品であり、全編沖縄で撮影されたことから、本学および地域社会と深いご縁のある作品です。
そこでこのたび、本作品の鑑賞を目的としたゼミ活動を支援するための特別補助を本学文化会理事会において決定いたしました。
特別補助に関する詳細については、学内掲示および学生課で案内しておりますので、ぜひご利用ください。
特別補助についての記事はコチラから



『⽊の上の軍隊』
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沖縄先⾏公開中/7 ⽉ 25 ⽇(⾦)新宿ピカデリー他全国ロードショー
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©2025「⽊の上の軍隊」製作委員会
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配給:ハピネットファントム・スタジオ
出演:堤 真一 山田裕貴
監督・脚本:平 一紘
原作:「木の上の軍隊」(株式会社こまつ座・原案井上ひさし)
企画:横澤匡広 プロデューサー:横澤匡広 小西啓介 井上麻矢 制作プロデューサー:大城賢吾
企画製作プロダクション:エコーズ 企画協力:こまつ座 制作プロダクション:キリシマ一九四五 PROJECT9
後援:沖縄県 特別協力:伊江村
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ ©2025「木の上の軍隊」製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/kinouenoguntai/
公式 X(旧 Twitter):@@kinoue_guntai