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オキコクコラム

恋愛は人生の宿題?良い交際をするコツは?~恋愛を心理学の視点で解説~

コラム
 もうすぐバレンタインということで、今回のテーマは「恋愛」です!
そもそも恋愛とは何なのか?一目惚れってどうして起こるのか?などなど、恋愛に関するギモンを大学の先生に聞いてみました。
今回は人間福祉学科で、臨床心理学や教職課程を専門としている片本 恵利先生にお話を伺ってきました!

片本先生プロフィール

✿今回の質問✿


☑恋愛は心理学でどう説明できる?
☑一目惚れはなぜ起こる?
☑告白について
☑良い交際を続けるコツは?
☑友情と恋愛の線引きはどこ?
☑恋愛と結婚の違いは?
☑心理学を学びたい高校生へメッセージ



Q.1 先生は高校生向けの講座でも「恋愛と結婚の心理学」をテーマに開講されていますが、そもそも「恋愛」は心理学において、どのようなものとして説明できるのでしょうか?
 いきなり一番難しい質問ですね。そもそも心理学といっても分野がとても広くて、その分野によって見方もだいぶ違います。恋愛に関する心理学の研究はたくさん行われていますが、恋愛の定義がバラバラだったり…「心理学ではこう言っています」と一言で語るのは難しいです。今ここで結論を出すよりは、ちょっとずつお話しをしていきながら、明らかにしていきましょう。


Q.2 なるほど…では直球の質問に移りますが、相手を見て「ビビっとくる」という感情や一目惚れというのは、なぜ起こるのですか?
 色々な説がある中で、今日は学者のユングという人の考え方を例に出しますね。

「全く自分のタイプじゃないのに一目惚れしてしまった」、「自分は明るくて楽しいことが好きなのに、何だか暗めで影のある人を好きになってしまった…」という事があると思います。

ユングによると、「私は〇〇な人間」というのはその人の表面的な部分、いわゆる氷山の一角であって、人間にはもっと隠れた幅広い領域があるんですね。明るい人でも暗い部分があったり、社交的な人でも引っ込み思案な一面があったり…「明るい・元気」みたいに似たような性格の側面だけ出して生きていくのって楽なんですね。ただそれでは人として成長できないし、人生の可能性も狭まってしまいます。

ユングいわく心の奥底に「自己」があり、表面的に生きている自分に「このままで良いのか?もっと良い生き方があるよ?」とメッセージを送ってくるんですね。そのメッセージは病気やトラブルなど、今までのやり方で上手くいかない事として表れることが多いです。
ユングのイメージ
 話が戻りますが、(表面的に)明るい人が全く別のタイプの人を好きになったとして、今までの自分だったら行かなかったような場所に行ったり、この人のために今までと違うやり方を考えたり、ということが起こります。
その分時間やエネルギーを使いますが、それによって、自分の新しい一面を発見して成長することになります。ユング的な考えでは恋愛はそのためにあると言えるかと思いますが、「だから恋愛は人生に絶対必要」ということではなく、仕事や芸術など他の方面でそういった成長をする人もいます。

ビビっとくるという感情や一目惚れというのは、自分の意識している表面的なレベルではないところで起こっている、自身の成長を促す心のサインと言えると思います。


Q.3 バレンタインということで、「告白」についてお話し頂けるとのことですが…  
 告白というのは日本独特の文化ではないかというお話があります。ご存知の通り、バレンタインで女性から男性にチョコレートをあげるのは日本だけですよね。欧米では恋人同士に限らず贈り物をしたりしますし、必ずしも恋愛の日ではない。告白して付き合う、という流れがそもそも欧米では無いそうです。

 じゃあどうやってお付き合いするかというと、10代半ばからデートを始めて、しかもその相手をどんどん変えたり、逆に星占いで結婚相手も式の日取りも決める風習のある文化や、そもそも親が決めた結婚に従わないと殺されてしまうような恋愛そのものが許されない慣習の残る地域もあります。

 心理学から少し外れますが、日本では昔はお家の前に立って名前を名乗る、ということがプロポーズになったりしましたし、平安時代だと歌を詠み合って、お付き合いできるか図り合っていくという文化もありました。近年の日本では一般的と思われてきた、告白して、はい!付き合いましょう!となるのは実は世界的にも、歴史的にも珍しいものなんですね。自分達にとって当たり前のことも、ちょっと時間軸や地域を広げて見ると、1つのやり方に過ぎなかったりするんですね。

 恋愛や告白のありようは、地域や文化、時代によって本当に多種多様です。自分が告白して、お付き合いして、〇〇して…というスタイルに縛られて苦しい思いをしているなら、他のマッチしてるやり方を取り入れることも出来ると思います。


Q.4 良い交際を続けるコツはありますか?
 まず典型的な失敗例を挙げますね。男女のカップルがいたとして、次のような会話があったとします。

彼氏: お昼なに食べたい?
彼女: (ハッキリ言うと可愛くないかな…男の人に決めてもらう方が良いのかな…)決めて良いよ!
彼氏: (それは想定してなかったな…男が決めた方がいいのかな…?)じゃあ近くのファミレスで!

~ファミレスにて~

彼女: (だんだん機嫌が悪くなる)
彼氏: …?
彼女: 私、ファミレスなんて行きたくなかった!
彼氏: !?(決めて良いって言ったじゃん!)
彼女: だいたいデートでファミレスなんてあり得ないでしょ!察してよ!

 はい、以上がよくあるパターンですね。
結局、自分が「こうしたい」と素直に言わず、男はこうした方が良いんじゃないか、女はこうした方が良いのでは…という世間の大多数の意見に縛られると、交際は長続きしないかもしれないですね。

「自分はこうしたい!」と言っていれば、一時はぶつかることもあるかもしれませんし最悪お別れになるかもしれません。でも、無理して自分のしたくないことを続けなければならない相手と長く交際するのはつらいですよね。むしろお別れになる人は自分には不釣り合いない人だと思って切り替えられれば、それを叶えられる人が必ず手を挙げてくれます。それをせずに「どうせ自分なんて…」と思っている人には、「どうせあなたなんて」という相手しか来ません。

 とにかく交際では、お互いどうしたいかを言い合って、お互いに努力するのが大事なんじゃないかなと思います。
また、相手が違う考えを持っている時、人はその考えに優劣をつけてしまいがちです。そうではなく、違うということを認めたうえで「私はこうしたい」と、たくさん話し合いを重ねるのがコツだと思います。


Q.5 友情と恋愛の線引きはどこになるのでしょうか?
 ユング的な考えで言うと、誰かを好きになった時、自分の成長のために色々と修行のようなことが降りかかってくると言われています。

好きになった人がもたらすものは「幸せへの片道切符」ではなくて、「人生の宿題」なんですね。なのでその人生の宿題にマッチする人が「恋愛対象」になるんですよ。逆に自分がその宿題をクリアして、相手がまだ解決できてない段階であればサヨナラになったり。世の中これだけの人がいても、お互い同じような宿題を持っているとは限りませんし、そうじゃない方はお友だち、となるかもしれませんね。

-恋愛漫画の展開にありがちですが、主人公に優しくしてくれる良い人とは付き合わず、ちょっと悪い方と付き合ったりするのは、これも「人生の宿題」を選択しているからですか?
 それも自分の成長のために、「修行」として選んでいるんでしょうね。ただ結婚と恋愛はまた別の話なので、結婚であれば、「良い人」の方が良かったというのはあると思います。結婚は結婚で修行がありますけどね。


Q.6 結婚の話が出ましたが、恋愛と結婚の違いは何ですか?
 恋愛は人間としてお互い高め合っていくことになりますが、結婚はそれだけでなく、社会生活を一緒にやっていくチームみたいなものですよね。恋愛に求めるものといえば、ドキドキとかスリルとか。だけど結婚だとドキドキは必要とは限りません。
 恋愛→結婚という流れも古い考えかもしれませんね。お見合いで結婚する人が多い時代もあったし、恋愛せずに一生過ごす人もいますし。さっきの話みたいに告白→恋愛→結婚→子どもを産んで…というのは本当に一時期の、一時代のやり方かもしれないですね。


Q.7 大学で心理学を学びたいという高校生へアドバイスやメッセージをお願いします。
 心理学には色々な分野があり、切り口も色々です。心理学を学んだら人の心がわかるのでは?と思いがちですが、むしろわからないことが増えて期待外れと感じるかもしれません。
学んでいって「分からない」ことが増えると思いますが、その「分からなさ」を楽しんで追求していってほしいなと思います。
 
 学問の世界はみんな平等です。皆が様々な切り口やアプローチで真理を追い求めていきますが、簡単に到達することは出来ない。なのでキャリアがある人も新しく学ぶ人も実は対等で、そんなに差はありません。簡単には分からない事を、ちょっとでも知ろうとする道のりを楽しんでほしいと思います。

 (4年間も役に立たないことしてられないと思うかもしれませんが、)人間を木に例えると、大学は4年かかって自分の興味のあることを探求しながら木の幹を太く、根っこを深くできる、とても特別なところです。
就職試験では最初の第一印象で多くが決まるという説があります。その第一印象を左右するのが実は(資格や〇〇ができますというような枝・葉の茂り具合よりも)人間の幹の太さや根っこの深さだったりするのではないでしょうか。