私たちが生きる現代社会は、かつてないスピードで変化し続けています。科学技術は日進月歩の勢いで進展し、とりわけAI(人工知能)の発達は、社会の構造や価値観にまで深く影響を及ぼすようになりました。AIは人類の発展に寄与する可能性を秘めていますが、その一方で、使い方を誤れば社会の安定を揺るがしかねない危うさをも併せ持っています。大学院教育もまた、この大きな潮流の中で変革を迫られており、今後さらにその影響は強まっていくでしょう。
こうした激動の時代にあって、大学院で学ぶ意義はこれまで以上に大きなものとなっています。本研究科ではAIそのものを専門的に扱う領域は限定的かもしれませんが、むしろ重要なのは「AIを前提とした学び」、すなわち AI+α の視点です。AIを適切に理解しつつ、経営、産業情報、経済、沖縄・環境経済、財政といった多様な分野の知を組み合わせ、地域と世界の課題に向き合う姿勢こそが、これからの時代に求められる研究者・実務者の姿です。
歴史を振り返れば、1970年代のスタグフレーションを契機に登場した新自由主義は、規制緩和や競争原理を推し進め、グローバリゼーションと結びつきながら世界経済を大きく変貌させました。iPhoneに象徴されるグローバルサプライチェーン、GAFAMに代表される巨大デジタル資本、24時間稼働する金融市場は、その帰結といえます。しかしその繁栄の陰で、格差は拡大し、オデッド・ローが『格差の起源』で論じたように、人類史に刻まれた格差構造は一層深刻化してきました。
こうした格差の拡大に対して、国連は、SDGsの理念のもと、貧困や飢餓の解消に向けた国際的取り組みを進める一方で、BREXITや自国中心主義の台頭など、国際協調を揺るがす動きも顕著になってきました。世界は今、複雑で不確実性の高い局面に立たされているのです。これをVUCAの時代といいます。
このような時代だからこそ、皆さんが大学院で知的探求心を深める時間は、何ものにも代えがたい価値を持ちます。自ら問いを立て、深く考え、地域と世界の未来に貢献する知を創造すること。それこそが、本研究科で学ぶ皆さんに期待する姿でもあります。
地域産業研究科 研究科長
村上 了太
Ryota Murakami