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法学研究科

法学研究科

理念・目的

 現在、政治・経済・社会の多くの分野でグローバル化が進行しています。21世紀の世界の秩序ある発展は、もはや個別国家の努力だけでは達成できません。一方、わが国に限って近未来を展望してみても、多くの分野(国家財政、産業、労働、少子化、年金問題等)で閉塞感が漂っています。
 このような状況の下で知的創造組織としての大学(大学院)の果たすべき役割は、ますます重要になっています。法学研究科は、法学の分野からその責任の一端を果たすために、混沌の時代に柔軟かつ機敏に対応し、優れたリーダーシップを発揮できる人材の育成を目指しています。

法学研究科がめざすもの

即戦力となる法律専門家の養成

 激動する現代社会においては、高度でしかも専門的な法に関する知識や知的技能の提供が、社会の各方面から要請されています。本研究科は、本学卒業生、地方公務員、企業で働く民間人に対して、その再教育や研究、免許・資格の取得等の機会を提供し、より高度な法律専門家の養成をめざしています。

インターンシップによる実務界の体験

 本研究科では、インターンシップを導入しています。この就業体験を通して、現実社会の法律に関わる諸問題に接し、法的思考上の対応力等を養うことができます。インターンシップは、院生自身の職業能力の向上および自己理解の促進をはじめ、これまで学んだ知識を確認し、研究すべき課題の所在や方向性を見出すことになります。また、修了後は即戦力となりうる法律専門家として、社会での大きな活躍が期待できます。

社会に基礎を置く、社会のための法学教育

 沖縄県は、海外に多くの移民を送り出してきたばかりでなく、同じく海外から多くの外国人を受け入れています。これらの人々や一般市民が求めるリーガル・サービスに応じるためには、県内社会に密着した法律に関する国際的な視野をもつ法学教育・研究の推進が必要となります。社会に基礎を置く、社会のための法学教育は、本研究科の沖縄社会に対する一つの使命だといえます。

生涯学習時代における知的技能の活性化

 本研究科は、入学要件さえ整っていれば、どの年齢からでも入学でき、多様化した市民の学習意欲に応えています。教員の専修免許のほか、税務・会計業務、民事・商事・法務分野における高度の免許・資格を取得したいという要求、また昼間公務員として働く人がより充実した仕事を実現するために必要な科目の専門的知識・技能を修得したいという要求に応えていきます。

社会のための行政専門家の育成

 沖縄県の将来の発展を考えるとき、基地問題、雇用問題、島嶼性、県外への経済・財政依存度の高さなど特有の諸問題に対し、法的にそれをどのようにとらえ、かつ対処していくかが問題となります。それらの問題解決のためには、自治体の政策形成能力やその政策立案(立法化)・調整・実行等の諸能力を育成・強化しなければなりません。また、市民生活の向上や県内の産業経済の発展などを推進する場合、そこに生ずる多様で困難な法律問題や行政的課題の解決にその力を発揮し得る行政や法律の専門家が必要となります。
 本研究科は、沖縄社会の活性化とその発展に貢献しうる、行政に関する知識や技術を身につけた人材育成もめざしています。

研究科長メッセージ

法という拠り所

本学13号館にある法廷教室にはテミスあるいはユースティティアと呼ばれる「正義の女神像」が飾られています。片手に天秤(正邪の判断)を持ち、もう片方には剣(実力)を携え、さらに目隠し(平等)をした立ち姿はある種の恐怖を感じさせます。天秤の片方に乗ってしまったが最期、バッサリとやられてしまう。一人合点ですが、最後の手段としての法(ultima ratio legis)という言葉を具象化すれば、このような像になるのだなと思います。争いや困りごとがどうにもならなくなったとき、女神が現れ、有無を言わさず決着を付けてくれる。有り難いけども怖い。法というものに、こんな印象があることは否めません。
しかしながら、私たちの日常にある法は別の働きを見せてくれます。例えば、お腹を空かせた私がコンビニでパンを買い、それを食べて満足する。どうしてこのような事が可能なのでしょうか。私が空腹であるという事実、お店にはたくさんのパンがあるという事実、この二つの組み合わせから起こり得ることは無限に考えられます。つまり、世界は自分で体験できる以上の複雑性に満ちており、多くの不確実性を孕むものといえるのです。これを確からしいものにするため、人は貨幣を媒介とする交換や契約といった複雑性を縮減するシステムを作り上げて、そこに秩序をもたらしました。法もそうしたシステムの一つであり、人の行為や相互のコミュニケーションに先立ち、それを意味づけ、どのように振る舞うべきかの指針となるのです。
法学研究科では、より複雑性を増す社会環境のなかで、高度な法的知識と法的思考力を拠り所に自らの途を開いていく志を持った人を迎え、それを習得する機会を提供しようとしております。


法学研究科 研究科長   
小西 由浩 Yoshihiro Konishi

法学研究科 各専攻