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南島文化専攻

南島文化専攻の特徴

南島の地域特性

地域とは、われわれが生活を共にしながら生きている、ある程度完結的な地理的社会空間であり、そこには独自の風土、社会、文化、歴史が存在します。それはわれわれの生活と不離一体のものであり、地域住民に共通するエトスの源泉となっています。地域は国家形成に先立つものです。地域文化研究が地域住民の発展に貢献することはいうまでもありません。
南島文化専攻は、南島地域の文化を教育研究の対象としています。南島地域とは、琉球文化圏を構成する南西諸島の島嶼地域、すなわち屋久島・種子島と奄美諸島の間のトカラ海峡に東西に引かれた生物地理学上の境界線である渡瀬線から、八重山諸島の一つ与那国島と台湾の間に引かれた南先島諸島線までの間の地域をさします。
南島文化は琉球文化の別称でもあります。この地域は、台湾・中国・韓国・朝鮮・フィリピンと隣接していることから、東アジアおよび東南アジアとの文化交流地点になっていること、琉球王国の形成発展を軸に独自の歴史をたどってきたこと、それ故にこの地域の文化が日本の中でも独自性を有していることは広く知られています。

文化の伝播ルート、地域的個別形態、変容過程の分析

この地域を研究することは、アジア文化の伝播ルート、地域的個別形態、変容過程を明らかにすることにつながります。この研究成果が南島地域だけでなく、日本の文化や社会の理解に貢献できることは共通した認識といえましょう。文化の正しい理解は、経済活動を含め、あらゆる地域活動の基礎をなします。文化の相互理解は、国際交流の基礎でもあることから、研究成果は沖縄および日本と周辺諸国との交流に役立ち、地域活性化にもつながっていきます。

研究対象の領域と地域

南島地域は周辺に東アジア、東南アジア、ミクロネシア、メラネシア、ポリネシアなどの諸地域を有することから、地域文化も多様な広がりを示すことになります。南島文化専攻では言語文化、民俗文化、先史・歴史文化、社会文化の4領域を中心に教育課程が体系化されており、南島地域文化を系統的に研究することができます。

基礎となる学科・研究所

南島文化専攻は、総合文化学部の日本文化学科、社会文化学科を基礎として設置されています。
また南島文化研究所は、本研究科を支える重要な関係機関です。
基礎となる学科・研究所

教育課程の構成(領域)

言語文化領域

言語文化領域では、南島地域の言語と文学を中心にして、日本の古典文学や近現代文学、さらには国語教育学も研究対象とします。教員の専修免許など高度の免許・資格の取得や官庁職員・一般社会人の再教育などを主な目的としています。

民俗文化領域

民俗文化領域では、研究の主要対象は南島地域ですが、内容的に東アジア、東南アジアなどの周辺地域との関連性が重要になってきます。教育課程や講義内容も、南島地域の民俗文化を深く掘り下げると同時に、周辺地域への広がりを持ったものになっています。

先史・歴史文化領域

先史・歴史文化領域での一つの柱をなす考古学は、南島地域の先史文化を研究対象としますが、東アジア、東南アジアなどの周辺地域との比較研究を重視します。もう一つの柱である南島史学は、近世の古文書講読および20世紀における資料の伝来の把握を重視し、南島地域史への理解を深めます。

社会文化領域

社会文化領域は、社会学を中心として、南島地域の社会関係の特質、社会構造の維持メカニズムとしての文化問題などを取り上げていきます。この領域は南島社会の基本構造、人間生成、現実の社会問題処理の側面も含みます。

専攻内容(授業科目)

領域授業科目
言語文化■南島言語文化特殊研究Ⅰ・Ⅱ
■南島文学特論ⅠA・ⅠB 
■南島方言学特論Ⅰ・Ⅱ 
■日本古典文学特論ⅡA・ⅡB
■日本近現代文学特論ⅡA・ⅡB 
■南島言語文化特論 
■日本言語文化特殊研究Ⅰ・Ⅱ
■南島文学特論ⅡA・ⅡB
■日本古典文学特論ⅠA・ⅠB
■日本近現代文学特論ⅠA・ⅠB
■南島芸能特論Ⅰ・Ⅱ
■国語教育学特論Ⅰ・Ⅱ
民俗文化■南島民俗文化特殊研究Ⅰ・Ⅱ
■東アジア文化人類学ⅠA・ⅠB
■東アジア文化人類学特論Ⅱ・Ⅲ
■南島民俗特論Ⅰ・Ⅱ
■南島民俗宗教特論Ⅰ・Ⅱ
■南島地理学特論Ⅰ・Ⅱ
■地理教育学特論
■民族誌特論
先史・歴史文化■南島先史文化特殊研究Ⅰ・Ⅱ
■南島歴史文化特殊研究Ⅰ・Ⅱ
■考古学特論Ⅰ・Ⅱ
■南島史学特論ⅠA・ⅠB
■南島史学特論ⅡA・ⅡB
■南島先史文化特論Ⅰ・Ⅱ
■アジア先史文化特論
■文化財保存特論
社会文化■南島社会文化特殊研究Ⅰ・Ⅱ
■南島社会特論Ⅰ・Ⅱ
■家族社会学特論Ⅰ・Ⅱ
■植民地社会特論Ⅰ・Ⅱ
■社会心理学特論Ⅰ・Ⅱ
■比較社会文化特論Ⅰ・Ⅱ
■現代社会文化特論
■国際社会学特論
■社会学研究法特論
■社会統計学特論

修了後の進路

・教育現場の管理職
・教育行政の企画立案
・他大学博士課程進学
・上級免許取得
・有職者の再教育
・交流・文化事業企画
・生涯学習

院生からのメッセージ

南島文化専攻 先史・歴史文化領域

私は県外出身で、進学をきっかけに沖縄にきました。大学では歴史学を学んでいましたが、その中で沖縄の独特な歴史・文化に触れたことや、「モノ」を研究対象とし、文献史学と関連しつつも異なる視点から歴史を考察する考古学に興味を持つようになりました。さらに、沖縄で文化財に関わる仕事に就きたいと考えるようになり南島考古学を専門的に学ぶことができ、実習も充実している本学大学院への進学を志望しました。
いざ入学してみると大学院の講義だけでなく学部の講義の聴講や図書館・ゼミ室にある豊富な蔵書、さらに先生方による学外での実習のサポートなど、予想をはるかに超えた恵まれた環境での学習がとても楽しいです。特に大学院での講義は少人数のことがほとんどであり、自らの研究に関連した分野をメインに講義内容を構成していただけるので、密な学習をすることができます。
修了後は、大学院で学んだ高い専門性を生かして、埋蔵文化財調査員や学芸員など文化財を保護・発信する仕事に従事したいと考えています。また、自らのライフワークとして大学院での研究を継続していきたいと考えています。

徳永 昂音
徳永 昂音

南島文化専攻 言語文化領域

私は中学時代を鹿児島で過ごしました。当時、沖縄で育った自分の言葉と鹿児島で育った友人たちの言葉の違いを不思議に思っていました。この経験から、私は言葉の「沖縄らしさ」について考えるようになり、本学の日本文化学科に入学しました。入学後、学部の講義の中で「ウチナーヤマトゥグチ」の存在を知り、卒業研究ではラジオ番組におけるウチナーヤマトゥグチの実態について調査しました。卒業後も言葉の「沖縄らしさ」をさらに探求したいという思いが強く、本学大学院に進学することを決意しました。
大学院では、卒業研究の結果を踏まえながら研究を進めています。研究に必要な琉球語や日本語に関するものだけでなく、他領域の講義も履修しています。持病があり、不安を抱えながらの履修ですが、大学のサポートを受けながら、また先生方にご配慮いただきながら、思う存分、自分の興味関心と向き合うことができています。
大学院修了後は、他大学院の博士後期課程へ進学を考えています。言葉の「沖縄らしさ」について研究しながら、誰もが自分の言語を愛せるような環境づくりについて模索していきたいと考えています。

名嘉眞 智恵
名嘉眞 智恵

2022年度修了生 修士論文テーマ一覧

●文学的文章の読みにおける学習者の自他意識の生成に関する研究
●マユンガナシに関する研究 ―言葉を発する神―
●南西諸島出土剝片石器の基礎的研究
●慶良間諸島の「集団自決」の体験者の証言者化 ―集合的記憶論とトラウマ記憶論の視点から―
●「外国人」を対象とした沖縄戦の記憶継承 ―沖縄県内の「平和博物館」における取り組み事例の研究―