1990年代以降、経済のグローバル化が急速に進展し、多くの国や地域の経済発展を牽引してきました。しかし、今日、世界の社会経済情勢をめぐって、イギリスのEU離脱や米中貿易摩擦など大きな問題が現れ、世界レベルでビジネスや経済への影響が懸念されています。一方、ICT(情報通信技術)の著しい進展に伴い、世界をめぐる経済環境に大きな革新をもたらし、越境データの利用に関わるルールづくりなど重要な課題がありますが、今後様々なビジネスイノベーションが期待されています。
ところで、沖縄に目を向けますと、道路や港湾などの社会資本の整備・充実に伴い、観光リゾート産業が大きく発展し、国内外からの入域観光客数は一千万人の大台を突破しました。特に、2012年以降の全国的な著しいインバウンドの進展に伴い、沖縄への外国人観光客数が急速に増加しました。さらに那覇空港第二滑走路の運用を機に、国内外の観光客数の増加や更なる観光産業の発展が期待されます。しかし、観光客数の増加による宿泊施設の確保、客単価の増加、オーバーツーリズム問題への対応、観光リゾート産業と地域の他産業とのネットワーク効果を図る連携強化、観光産業の基礎である沖縄の自然環境・観資源の保全など多様な課題が想定されます。今後沖縄の持続的な発展を図るには、このような観光リゾート産業をめぐる諸課題のほか、製造業が脆弱な問題、所得格差の問題、雇用ミスマッチの問題、財政依存の問題、基地問題、子ども貧困の問題など様々な社会経済的問題への対応策が求められています。
地域産業研究科では、地域産業・経済発展の原動力となる高度な専門知識をもつ人材育成を目指しています。そのため、教育研究分野や開設科目は多岐にわたっています。また幅広い専門的知識を修得できるように、主専攻と副専攻が設置されています。本研究科は創設以来すでに二十年余りを立ちました。その間、現在すでに活躍している大学教員、公務員、研究員、税理士や中小企業診断士など多くの卒業生を輩出しました。皆さんがこれからの大学院地域産業研究科での研究活動において、各自の専門分野に関するより高度な問題発見力・分析力を高め、地域産業・経済における諸課題に対処できる高度な専門知識をもつ人材に成長することを心から祈願しています。
地域産業研究科 研究科長
兪 炳強 Heikyo Yu