1990年代以降、経済のグローバル化が急速に進展し、多くの国や地域の経済発展を牽引してきました。しかし、2020年初頭に始まった新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界的に社会や経済が深刻な問題に直面し、とりわけ観光業に甚大な損失をもらしています。一方、ICT(情報通信技術)の進展が世界をめぐる経済環境に大きな革新をもたらし、越境データの利用に関わるルールづくりなど重要な課題はありますが、今後様々なビジネスイノベーションが期待されています。
ところで、沖縄に目を向けますと、1972年に本土への復帰以降、道路や港湾など社会資本の整備・充実に伴い、観光産業が基幹産業に大きく発展し、2019年には入域観光客数が一千万人の大台を突破しました。しかし、先述した新型コロナウイルスの感染拡大により、入域観光客数が激減し、観光業に依存する地域経済の諸課題が顕在化しました。今後、沖縄の持続的な発展を図るには、観光産業をめぐる諸課題のほか、製造業が脆弱な問題、所得格差の問題、雇用ミスマッチの問題、財政依存の問題、基地問題、子ども貧困の問題など様々な社会経済的問題への対応策が求められています。
地域産業研究科では、地域産業・経済発展の原動力となる高度な専門知識をもつ人材育成を目指しています。そのため、教育研究分野は、経営領域・産業情報領域・経済領域・沖縄環境経済領域にわたり、経済学、経営学、マーケティング、会計学、情報、環境に関する科目が開設されています。また幅広い専門的知識を修得できるように、主専攻と副専攻が設置されています。本研究科は創設以来すでに二十年余りを立ちました。その間、現在すでに活躍している大学教員、公務員、研究員、税理士や中小企業診断士など多くの卒業生を輩出しました。
皆さんがこれからの大学院地域産業研究科での研究活動において、各自の専門分野に関するより高度な問題発見力・分析力を高め、地域産業・経済における諸課題に対処できる高度な専門知識をもつ人材に成長することを心から祈願しています。
地域産業研究科 研究科長
兪 炳強 Heikyo Yu