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沖縄法政研究所

設立趣旨


 沖縄法政研究所は、沖縄にかかわる法と政治の諸問題を研究する目的で、1997年11月に設立された研究機関です。当研究所は、研究会講演会公開シンポジウムを開催する他、本学の学生など対象に無料法律相談を行っています。刊行物は、研究紀要『沖縄法政研究』所報『沖縄法政研究所所報』をそれぞれ年一回発行しています。
 現在、所長以下、26名の所員と、78名の特別研究員によって構成され活動しています(所員数等の詳細)

沖縄法政研究所設立趣旨

 沖縄国際大学は、沖縄が本土に復帰した1972年に創立されました。われわれは、日本国憲法の掲げる「崇高な理想」を深く自覚し、この沖縄の地に憲法の理念が名実ともに実現されるべく、その役割の一端を担っているといわなければなりません。
 しかし、形式的に日本国憲法下に入ったとはいえ、沖縄には今なお米国統治の後遺症ともいうべき未解決の問題が山積みしています。これは、全国土面積の0.6パーセントにすぎない狭小な本県に在日米軍施設の75パーセントが今なお存在するという事実に象徴的に示されています。そしてこのことは、現代日本の抱える諸問題がこの沖縄の地に集中的に現れていることを示すものであります。例えば、経済面でみると日本政府は復帰後これまでに約5兆円を超える沖縄開発振興事業費を投入したものの、県民所得は依然として全国最下位、失業率も全国平均の2倍前後の状態が続いており、沖縄が経済的に自立しているとは言い難い状況にあります。さらに、膨大な基地の存在が、社会、教育、環境その他あらゆる面において多くの問題を派生せしめていることは、改めて統計資料をもって示すまでもない周知の事実でしょう。
また、最近の駐留軍用地特別措置法の立法過程をみると、地方自治とは何かを改めてわれわれに問いかけています。
 このような事実を直視すると、復帰後33年を経たにもかかわらず今なお憲法の理念があまねくゆきわたっているとは到底言い難く、これはわれわれに対し本土復帰の真の意味を問い続けていくべき課題を与えているものといえるでしょう。
 さらに、以上にみたような国全体の政治の在り方と深くかかわる問題のほか、この地においては、例えば、血縁社会に特有な門中制度や相続制度、戦後アメリカ支配に由来する国籍問題や養子縁組問題、あるいは尖閣諸島の帰属をめぐる問題等々、があります。それは、沖縄が日本本土に対する歴史的・地理的・文化的 な特異性を有し独自の文化圏を形成していることに起因します。そしてそれは又、必然的にアジア圏の法と政治の比較研究へとわれわれの関心を広げていくこと になるでしょう。
 このような外的・内的要因によって生ずる法的・政治的諸問題に対し、学問の光をあて一定の提言をしていくことはわれわれに課せられた今日的責務であるこ とを強く自覚します。これらは諸問題の解明することによってこれを普遍的なテーゼに高めていくことができるならば、わが国社会や学界に対してもなにがしかの貢献をなしうると自負するものであります。
 われわれは、この目的を達成するために内外の多くの研究機関との交流を通じて関連する文献や資料を収集し、研究会の開催や研究成果を発表する紀要の発行などを行い、この分野におけるアカデミズムの一中心たらんと欲するものであります。
 沖縄国際大学は1978年に南島文化研究所を、また1991年には産業総合研究所を設立しました。前者は南島地域の社会と文化の総合的研究を目指し、後者は産業に関する理論及び実証的研究を通じて産業社会の発展に寄与することを目的として設立されたものであります。
 われわれは、これらの既設の研究所と協力しながら、法学・政治学の面から貢献をなすべくここに沖縄法政研究所を設立しました。
(1997年7月10日)