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概要

 平成28年度は、研究に必須な購入機器などを購入し、竹富島の喜宝院蒐集館収蔵の染織物の調査を行った。購入機器のリストとその
個数は次の通り。
 (1) 分光測色計CM-2600dポータブル分光測色計          1式
 (2) Sanwa Supplyデジダル顕微鏡400-CAM025 ポータブル  3個
 (3) CELESTRONデジタル顕微鏡II CE44341           2個
 今回の調査では、次のような分担で調査を実施した。又吉光邦(研究代表者)は、幻の繊維と呼ばれる桐板を用いた衣装1点、ならびに風呂敷1点を分光測色計CM-2600dポータブル分光測色計を用いて調査し、また形付(紅型)の踊り衣装1点、桐板衣装と風呂敷各1点、形付(紅型)端布3点、細糸芭蕉端布5点をSanwa Supplyデジダル顕微鏡400-CAM025とカメラを用いて調査した。これらにより繊維の詳細が分かるデジタル画像データを得ることができた。久田多恵(研究分担者)は、絣端布の絣模様や繊維について200件、浮き織り技法の細帯について35件をSanwa Supplyデジダル顕微鏡400-CAM025とカメラを用いて調査。それらにより繊維の詳細が分かるデジタル画像データを得ることができた。佐久本邦華(研究分担者)は、浮き織りの手拭い19件、尚順男爵の形付(紅型)手拭い1件、風呂敷(藍染、形付(紅型))5件、形付(紅型)端布4件と形付(紅型)踊り衣装1件のデザインについてカメラを用いて調査。それにより衣装と風呂敷の形付(紅型)のデザイン、手拭いのデザインについてのデジタル画像データを得ることができた。

進捗

 平成28(2016)年度よりスタートした本研究課題は、初年度の予定である竹富島の喜宝院蒐集館の古布裂の調査を行いました。調査では研究代表者1名、研究分担者2名がそれぞれの立場から多くの情報をデジタル画像データとして収集しました。
 まず、分光測色計を用いて、桐板(トンビャン、ドンビャン)と呼ばれる幻の繊維で作られた衣装1点、ならびに大風呂敷のデータを収集できましたので、次回以降の調査では、分光測色計による桐板の繊維の同定が可能になるのではないかと期待できます。その一方で、桐板の繊維を直接採取し、それとの比較検討も行う必要性も出てきました。また、デジタル顕微鏡を使用しての調査では、細芭蕉布と呼ばれる貴重な古布裂に芭蕉繊維だけを用いたものでない古布裂が多々あることを発見しました。今後、他地域での古い時代の芭蕉布についてのデータを増やすことで、今回の知見が、竹富島固有のものなのかを明らかにできればと考えています。
 次に沖縄地方でティーサージと呼ばれる手ぬぐいのデザイン、風呂敷のデザインについて調査し多くのデータを収集できたので、今後、各地域に残るティーサージと風呂敷のデザインの手法・技法等の調査に役立ちます。またそれらの調査によりそれぞれの地域のデザインにおける共通性・非共通性などの理解を深められると考えています。ここで、大きな風呂敷などの撮影方法に関する当初想定していなかった問題に遭遇したため、平成29年度以降ではそれを解決してデザイン技法についての調査に万全を期したいと考えていま
す。
 最後に、調査した古布裂には現在用いられていない織の技法が確認できました。そこで、それらのいくつかをまず復元しようという取り組みを始めています。この復元作業によって調査だけではわからない、様々な知見が新たに得られるものと期待しています。

写真

  • サンプル画像1形付裂
  • サンプル画像2絣裂
  • サンプル画像3リンカー(うっちゃき)
  • サンプル画像4
  • サンプル画像5トンビャン
  • サンプル画像6与那国花織
  • サンプル画像7与那国花織
  • サンプル画像8ウチュクイ
  • サンプル画像9調査風景