平成29(2017)年度は、与那国島の伝統染織物の調査を与那国町教育委員会・与那国町伝統織物共同組合・与那国町徳美工房で行いました。
与那国町教育委員会のご協力で、昭和52年制作の形付(紅型)幕、および寄贈された神衣装の調査をしました。形付(紅型)幕は、サイズや文様について調査。城間栄順さんの制作と思われることを確認しました。一方、神衣装は、最後の神女と言われる与那国町の神職の方の親戚が寄贈したもので、サイズなどを調査した後に、染織技法について顕微鏡を用いて調査しました。調査の結果、木綿地で、特殊な顔料(与那国島の一地域でしか取れない)を何らかの定着材を用いて付着させる方法を確認しました。
与那国町伝統織物協同組合のご協力で、古い衣装数点と与那国花織りの見本帳、ならびに植物染料で染められた絹糸などを調査しました。古い衣装には、繊維の判別ができないもの、読谷山花織りと同じ織り方のものなどを確認しました。見本帳は、古いものから現代のものまで閲覧・および写真撮影ができ、古典柄や現代的な意匠の柄を見る事ができました。現在の問屋は古典柄での反物の注文が多く、伝統的与那国花織りを用いての商品開発は、バックやネクタイなどを手がけてみているもののあまり芳しくないとのことでした。調査の過程で、与那国の水は地下ダムから供給されており、植物染料の定着が非常によいとの経験談を得ることができました。今後、水に含まれる鉱物などの特定が進めば、よりよい植物染料による染織物の生産につながると期待できます。織の色彩は、すべて当地で取れた植物染料によることも併せて確認しました。
与那国町徳美工房は個人の工房ですが、与那国花織りを復活させた工房で、古い意匠並びに神衣装に用いられる顔料を用いての復元衣装の調査ができました。また、その神職が用いる特殊な顔料の提供がありました。