《学校法人会計と企業会計との違い》
学校法人も企業も経済活動を営む事業体であるという点においては同じですが、事業活動として「営利」を目的とする企業と異なり、学校法人の目的は、「教 育・研究活動」に取り組むことにあり、「営利」活動を目的としてはいません。このような事業目的の違いから、学校会計と企業会計の処理には少なからず差異 がありますので、今回はその中から以下の2つのことを取り上げ、ご説明します。
(作成が義務付けられる「計算書類」の違い)企業、学校法人ともに、経営状況の顛末を表すためにいくつかの「計算書類」を作成しますが、両者において作成が義務付けられている書類に違いがあります。
企業会計、例えば株式会社等の会計処理では、「会社計算規則」という法律に基づき「貸借対照表」、「損益計算書」、「株主資本等変動計算書」及び「個別注記表」といった計算書類を作成して、組織内外に経営成績を明らかにしているようですが、学校法人の場合は「学校法人会計基準」という法律の下に「資金収支計算書」「事業活動収支計算書」「貸借対照表」の各計算書類の作成が義務づけられ、当該法人が「教育・研究活動」を推進するために営む「学校」の経営及び財政の状況を明らかにすることになっています。
なお、「企業会計原則」の「一般原則」と同じように「学校法人会計基準」でも、「真実性の原則」、「複式簿記の原則」、「明瞭性の原則」、「継続性の原則」を定め、これらの原則によって会計処理を行い、先の計算書類を作成することとなっています。
(学校法人会計基準の一部を改正について)「学 校法人会計基準の一部を改正する法律」(文部科学省令第15号)の交付により、これまでの会計処理は変更されていませんが、計算書類の内容がより分かりや すく、且つ的確に学校法人の財務・経営状況を把握できるよう改善・充実が図られました。計算書類の主な変更事項は次の通りです。
1.「資金収支計算書」を組み替えて「活動区分資金収支計算書」を新たに作成
「資金収支計算書」を3つの区分(教育活動・施設設備等活動・その他の活動)に組み替え、キャッシュフロー計算書に近いイメージとなりました。
2.「消費収支計算書」の名称を「事業活動収支計算書」に変更
「事業活動収支計算書」は区分経理を導入し、経常的な収支均衡(教育活動収支及び教育活動外収支)と臨時的な収支均衡(特別収支)を分けて表すことになり、企業会計でいう損益計算書に該当するものです。
3.「貸借対照表」への「純資産の部」表示
従前の「基本金の部」と「消費収支差額の部」を「純資産の部」として表示することとなり、他の会計基準と比較しやすくなりました。
(「基本金」について)次に、学校法人が保有する資産について、企業会計では用いられない「基本金」という概念が用いられていますので、そのことについてお話します。
「学校法人会計基準」では「学校法人が、その諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するために維持すべきものとして、その帰属収入のうちから組み 入れた金額を基本金とする。」と定めており、第一号、第二号、第三号、第四号の各基本金の組み入れ状況について明らかにするよう「貸借対照表及びこれに附 属する明細表の一つとして、基本金明細表」の作成を義務付けています。
これらの基本金は学校法人が教育・研究活動を現在、そして将来にわたって維持、発展させることが出来るように備えてある(あるいは取得を計画している)校 地や校舎、奨学金や研究費等の基金、恒常的に保持すべき資金として文部科学省が定める額であり、それぞれ金銭や資産として組み入れ(保持・貯蓄)すること になっています。
企業においては事業成績が悪化して損失が生じた場合、例えば会社の資産である土地や建物等の「固定資産」を売却するなどして損失を補てんすることが考えら れますが、学校法人が何らかの理由により運用資金が不足したからといって、その運営に充てるためとはいえ校地や校舎を売却するなどということは、本来の活 動である「教育・研究活動」を滞らせることになる訳ですから、許されることではありません。
また、学校法人は、現在在学する学生だけではなく、将来受け入れる学生に対しても、現在と同じか同等以上の環境を提供するよう努めなければいけません。そ のようなことから、各学校法人はこれらの「基本金」を現在、そして将来において計画的に組み入れるよう義務付けられていて、なおかつ、これを容易に取り崩 すことが出来ないように定められているのです。
参考:基本金の種別第1号基本金 設立や規模の拡大若しくは、教育の充実向上のために取得した固定資産
第2号基本金 将来取得する固定資産にあてる金銭その他の資産
第3号基本金 基金として継続的に保持し、運用する金銭その他の資産
第4号基本金 恒常的に保持すべき資金
各計算書の主な科目