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大学概要

米軍ヘリ墜落事件

学生による意見発表(2023年度)

文書
「世界一危険な基地を目前に、私たちができること」


法学部 法律学科 
2 年次 仲宗根 桜


「世界一危険な基地、普天間飛行場」、私がこの言葉を聞いたのは中学生の頃でした。このように呼ばれるのは、普天間飛行場から飛び立つ米軍の航空機が、飛行場と隣接する市街地の上空を飛び回るためです。世界一危険な基地と言われながらも、その姿は沖縄戦で米軍が沖縄に上陸し、強制的に建設した1945 年から78 年経つ「今」も残っており、そこから飛び立つ航空機の飛行音は私の耳を突き刺し、私の胸に「落ちる」という不安と緊張感を生み出します。私が抱くこの緊張感と不安をさらに加速させる出来事があります。それが19年前の2004 年8 月13 日、私が勉学に励むこの場所に米軍のヘリが墜落した事件です。

私がこの事件を知ったのは、普天間基地が「世界一危険な基地」と呼ばれることを聞いた中学生の頃でした。そしてこの事件は奇跡的に負傷者がでなかったと知り安堵しましたが、同時に、普天間飛行場が未だ撤去されていないことに疑問を抱いたことを覚えています。

私は墜落事件が起きた2004 年に生まれました。私が育ったコザのまちも米軍基地と密接な関係にあり、家の上空を米軍の航空機が飛び交っていました。しかし、米軍と沖縄の関係を頭では理解していても、現実に見る空で鉄の塊が大きな音を立て飛び回る姿は、緊張感と不安を掻き立てます。これは「平和」に程遠い現実だと私は思います。

私が感じてきたこの緊張感と不安は沖縄国際大学に入学してさらに増しました。爆音を立てて滑空する米軍の航空機が、校舎のすぐ上を通過していくためです。航空機は、私が手を伸ばしたら届きそうで、家で見上げる米軍の航空機と、大学で見るその景色とでは大きなギャップを感じました。この景色は2004 年に起きた事件は誰しもが予想できたことだと教えてくれます。私は、このような事件があったにも関わらず、普天間飛行場が残り続けてい
ることは、問題が解決されていないことだといえると思います。

また、この事件は、日米関係の難しさを明るみに出しました。通常、沖縄の地で起きた事故や事件は沖縄県警が調査にあたります。しかし、ヘリ墜落の事件現場を占領したのは米軍だったのです。このことについて日本政府は、「日米地位協定に則ったもの」とし、米軍は「日米合意に基づいたもの」と説明しました。では、もし、この墜落によって負傷者が出ていた場合も同じように対応したのでしょうか。「日米の協力」とは何か、今一度立ち止まって考えるべきだと思います。

そして、普天間飛行場は在日米軍の基地ですが、日米の関係だけではなく、世界情勢とも深い関わりがあり、現に、普天間飛行場も「危ないから無くそう」の一言でなくせる状況にない現実に突きつけられています。米中対立、ロシアとウクライナの問題、台湾の問題など、複雑な問題の先端に私たちの沖縄は立たされており、この絡み合う問題は既に手の付けられない未来へと進んでしまっているのではないでしょうか。私はなす術がなくなる前に手を打たなければならないと思います。

ここまで大きな問題を取り上げましたが、私たちが「平和」のためにできることは具体的に何があるでしょうか。例えば、ただ「平和」を待つだけではなく、選挙で自分と近しい考えを持つ政治家に投票することやテレビや新聞、SNS などから行き交う情報を習得し正誤を確かめることも重要なことだと思います。しかし、一番重要なことは、人と意見を交わすことだと私は思います。私には2 つ上の姉がおり、よく2 人で政治や世界情勢について意見を交換し合います。その際に、独りよがりの考えよりも、他人の意見を聞くことで自分自身の中に新たな一面が見いだせることを知り、多くのことを学びました。したがって、意見交換を強く勧めたいと思います。細かいことや簡単なことについても意見を交わすことで、自分の学びにもなり、相手にも影響を与えることができるためです。その和が広がればやがて政治を動かすことができるのではないでしょうか。

日本本土と沖縄には知識の隔たりがあると思います。これはヘリ墜落の事件において日本本土の新聞では小さくしか取り挙げられなかったことから伺えます。また、本土からくる観光客が気軽に基地内に入れると思っている人が多いことからも伺えます。基地は遊び目的の観光所であると誤った認識をしている人もいるのです。情報が次々と更新されている今日では、情報が他の情報に押しつぶされ、注目を集めない状況が多々あります。しかし、意見交換はこの知識のギャップを埋めることができると思います。私たち沖縄県民は、情報のギャップによって焦燥に駆られるのではなく、情報を伝える努力が必要になっており、その手段として意見交換があると思います。今の私たちが住む日本は、会話やSNS によって自由な意見交換ができます。これを有効に活用し、「平和」を作るのは我々一人一人であるという意識をもつことが、私たちの「沖縄の平和」にも繋がるのではないでしょうか。




「基地との向き合い方とこれからの私たち」

法学部 地域行政学科
3 年次 新垣 友貴 


今日、日本の国土面積の0.6%に過ぎない沖縄に、在日米軍専用施設面積の約70%が存在しています。このことから、米軍関係の事件や事故が長年続いています。今から19 年前の2004 年8 月13 日午後2 時15 分頃、この沖縄国際大学の本館ビルに大型の米軍ヘリが墜落したのです。墜落後は、宜野湾市消防による必死の消化活動で到着から41 分後に鎮火されました。当時は、大学が夏休みだったことから怪我人や死傷者は幸い出ませんでしたが、考えてみれば、大学周辺は多くの住宅街が立ち並んでおり、状況次第では多大な犠牲者を生む可能性は大いにありました。当時、私は2 歳でこの事故について記憶はありませんが、母は病院からニュースでこの事故を知り、衝撃を受け、恐怖を覚えたそうです。また、父の実家がこの大学の周辺だったことから「墜落したヘリの部品が飛んできていないだろうか」、「事故に巻き込まれていないだろうか」など非常に心配していたそうです。

戦後から沖縄は否応なしに基地と共存してきました。それは、今も変わることはありませんし、私たちの生活に大きく関わっています。幼少期から、戦争についての講和を聞くことや平和集会、基地についての新聞作りなど行ってきました。そこから、沖縄の基地問題や地域問題について興味が湧き、大学ではそのことを深く学ぶことができるこの沖縄国際大学の法学部地域行政学科に入学を決めました。この大学はまさに世界一危険な基地の隣に立地しており、私は今でも衝撃を受け続けています。授業中にも関わらず、訓練が行われ、コロナ禍で窓を開けているために、騒音で講義内容が理解できない状況や私の友人は、大学入学試験の面接において騒音で会話が聞こえない状態で試験をしていました。今まで、騒音には多少慣れていた部分はあったのですが、この近い距離になるとさすがにここまで苦しい状態になるのは初めてでした。そのような中、ゼミやボランティアで実際に基地へ訪問する体験をしました。すると、そこはまさにアメリカで特に危険を感じることはありませんでした。ゼミの訪問では、軍人の方々が実際に沖縄にどう貢献しているのか、どういう取り組みを行なっているのかを聞くことができ、ボランティアでは、基地の中の子どもたちが日本語を学ぶ姿も見ることができました。このような貴重な体験は基地があることのメリットとなるでしょう。しかし、前で述べた通り事故や騒音はデメリットとなることかつ沖縄にとっての大きな負担にもなります。ヘリ墜落事故に関しての資料が本学の図書館に展示されています。これまでは、ニュースや新聞などでしか見てこなかったのですが、ヘリ墜落直後や現場調査の写真を実際に拝見し、異様な光景を目にしました。それは、沖縄の現場にも関わらず、沖縄の警察・消防官の姿はあまり見当たらず、米軍の人たちしかいなかったのです。これは、日米地位協定による日本がアメリカ軍に実権を握られていることが浮き出たことになります。この協定は、昭和35 年に日米間で締結されて以来、現在まで一度も改定されていないことかつ日本の法律・憲法よりも立場的には上になっていることは確かです。「どのような場所であってもアメリカ軍の財産について日本は捜索、差押え、または検証する権利を持たない」という日米地位協定は大きな壁となり、基地が集中する沖縄にとって、負担は大きなものとなります。
私は、日本と沖縄の基地に関する負担は対等にしなければならないと考えます。沖縄が7割、日本本土が3 割という割合は誰が見ても対等ではありません。そこから、事件・事故の起きる確率は必然的にこの沖縄が高くなります。県民は、常に危険の中で生活をしなければなりませんし、この危険な状況に慣れてしまってはいけないのです。これまで、多くの沖縄県知事が普天間飛行場の県内移設反対や沖縄の米軍基地の整理縮小を掲げて来ましたが、日本政府はそれを無視したり、熱心に取り組む姿勢が見られません。その結果が今でも続いているのです。ならば、私たち若者が変えなければなりません。「人の心は発言では動かない、人の心を動かすのは行動」なのです。そのために、若者と上の世代との対話や基地の在り方からその課題についての考え、県外の人たちへ沖縄の基地について知ってもらうための交流など少しずつできることを行っていく必要があります。

最後に、この基地に対して沖縄の問題としてのみ捉えるのではなく、日本全体の問題として解決・改善に向けて尽力しなければなりません。沖縄と日本の両者の考えにズレが生じ、沖縄の負担は凄まじいものがあります。大好きな沖縄を守るためにも日本全体で共に協力していきましょう。

今日、8 月13 日が沖縄国際大学にヘリが墜落した事故は事実であり、覆すことはできません。このような悲惨な事故をこれから起きないためにも基地問題に対してみなさん1 人1人が考えることで、大きな解決策へと必ず繋がります。沖縄の人々が毎日安心して、生活できる日を心から願っております。