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教育企画運営情報

沖縄国際大学卒業生教員アンケート調査結果

 このたび本学卒業生で教員となっている方にアンケートを実施しました。

趣旨と目的

○本学卒業の教員が担当してきた校務の特徴などを把握することなどから、本学教職課程の「教育力」の特徴を調査することです。
○本調査の背景
(1)本学の「特色GP」申請書に次のように書きました。
「これまで900名近い卒業生が実際に教員として採用されている。学校長の評価は、素直であり、生徒指導・生活指導ができるということである。『生徒指導主任』、『生徒相談係』、『中途退学対策係』といった、子どもの自立の過程に寄り添う職務にたずさわる教員が多いようである。」
このことは教育実習校との情報交換等から推察されるものでありましたが、今回の「特色GP」採択を機にこれを検証することとしました。
(2)2004(平成16)年11月文部科学省により実施された教員免許課程大学実地視察の際、本学教職課程のいっそうの質の向上を期待するという趣旨で、卒業生の校務分掌等の特徴を把握してはどうかという助言を受けました。
○集計方法について
集計にあたっては各教科間の比較ができるよう努めました。教育課程の基幹部分は全教科共通でも教科ごとに取組の内容や教員採用状況等に違いがあるからです。

こうした卒業生教員の質的調査は、本学教職課程の「教育力」の現状を把握する自己点検作業であります。これにより本学教職課程のいっそうの充実と発展の糸口が見出されるものと考えます。

対象者

沖縄国際大学卒業生教員(本採用者)約900人のうち、送付先が明らかで中学校と高等学校に勤務する者718人を対象にしました。 718人の内訳は、男性277人(39.6%)、女性441人(61.4%)、不明4人(0.6%)。出身学科別に見ると、法学科59人(8.2%)、経済学科45人(6.3%)、商学科77人(10.8%)、国文学科217人(30.0%)、英文学科188人(26.1%)、社会学科95人(13.2%)、短大経済科4人(0.6%)、短大商科2人(0.3%)、短大国文科15人(2.1%)、短大英文科3人(0.4%)、日本文化学科1人(0.1%)、人間福祉学科1人(0.1%)、大学院南島文化専攻1人(0.1%)、不明10人(1.4%)でした。

アンケート用紙

アンケート用紙は最後尾に掲載してあります。

期間

2006(平成18)年8月17日(送付)~31日(投函締切)

回答者数

182人より回答がありました(回答率25.3%)。 卒業学科別について、アンケート対象者数と回答者数の全体に占める割合を比較すると、法、経済、商、国文、英文、社会の各学科について、この順に8.2%:8.8%、6.3%:9.3%、10.8%:9.3%、30.0%:29.7%、26.1%:24.7%、13.2%:15.9%となっています。対象者の分布に相似の回答が得られたと言えます。

0.アンケート回答者の属性

①男女割合
男女割合

②勤務先・教科別人数
勤務先・教科別人数
(%は小数第1位を四捨五入)

*(略称の説明)中国=中学国語、中英=中学英語、中社=中学社会、高国=高校国語、高英=高校英語、地歴=地理歴史、高社=高校社会(以下、同じ。)
*「その他」は小学校勤務者(誤送付)2人、本学教職課程で取得できない教科1人、実習助手1人です。

③卒業学科別人数
卒業学科別人数

*(略称の説明)法=法学科、日文=日本文化学科、英米=英米言語文化学科、社文=社会文化学科

④年代別割合(平均年齢36.1歳)
年代別割合

⑤現在の勤務学校の所在地
現在の勤務学校の所在地

⑥在職年数:平均在職年数(全体)10年
在職年数:平均在職年数(全体)10年

1.校務分掌の特徴や傾向

(注)校務分掌のスコアの取り方。
回答者が当該校務を担当したことが1回以上あれば1とカウントしました。勤務校の別や担当年数は無視することとし、例えば1人が3つの勤務校で延べ5年担当したとしても1とカウントしました。
学校種間や教科間が混在している場合、在職年数の多い方としました。小学校となった場合、「その他」としました。「その他」には本学教職課程で取得できない教科の中学校勤務者1人を含んでいます。小学校勤務者2人、と実習助手1人は除かせていただきました。

①全体
全体

②勤務先・教科別
勤務先・教科別

勤務先・教科別

勤務先・教科別

勤務先・教科別

勤務先・教科別

勤務先・教科別

勤務先・教科別

勤務先・教科別

勤務先・教科別

勤務先・教科別

勤務先・教科別

勤務先・教科別

勤務先・教科別

勤務先・教科別
(※再掲)

勤務先・教科別
(※再掲)

【考察1:校務分掌の特徴や傾向】
全体では、多い順から第1位と第3位に生徒会指導と生徒指導・生活指導が入っており、「生徒指導・生活指導ができる」という学校現場での評価を裏付けていると言えます。
生徒会指導担当には、生徒と教職員とのコミュニケーション力や調整能力、生徒を動かす指導力そして何よりも生徒からの信頼が必要だと言われます。その意味で好んで引き受ける教員は少なく、むしろ敬遠される校務です。それにもかかわらずこの担当経験者が群を抜いて多いことは特筆されることです。
勤務先・教科別では、国語では中学・高校ともに「図書」が最も多い点が目を引きます。中学社会で「人権教育」が突出している点が注目されます。「人権教育」の殆どのスコアは中学社会のものです。高校の社会、地理歴史や公民には見られない傾向です。
「図書」と「人権教育」のこうした傾向は学校種や教科の特徴から来るものであるのか、本学出身者の特徴から来るものであるのかは不明です。教科の特徴であるとすれば国語科や社会科の学生に何に目を向けさせるべきかという点で示唆的です。

2.卒業後採用されるまでの年数の特徴や傾向

①最長・最短・平均について、全体
最長・最短・平均について、全体
*卒業年度・採用年度不明:14人。小学校勤務者2人、と実習助手1人は除かせていただきました。

② 最長・最短・平均について、勤務先・教科別
 



 

 

 

 

【考察2-(1):卒業後採用されるまでの年数の特徴や傾向】
平均年数に着目した場合、全体の平均年数3.4年と比較したとき、中学英語(1.6年)、中学国語(2.7年)、地理歴史(2.7年)、高校英語(2.9年)の順に早く採用されています。
反対に最も年数がかかっているのは公民(5.2年)で、中学社会(4.9年)、商業(3.9年)、高校社会(3.9年)、高校国語(3.5年)の順です。
本学では「国語、英語は早く、社会科は遅い」というイメージがありましたが、それをほぼ裏付けた格好になっています。しかし、社会科の中でも地理歴史は比較的早く、また、国語と英語は中学と高校で開きがあります。
近年の沖縄県の教員候補者選考試験では一次試験では教職教養と一般教養がマーク・シート方式を採用していることから、合否を左右するのは教科専門であると言われています。そのことを考えると、教科の背景にある地理学と歴史学教育の質のよさを示しているともいえます。反対に、国語科においては高校で教える水準の教科能力の研鑽が課題となっていると言えるかもしれません。

③卒業年度が1972-1992年度の回答者と1993-2005年度の回答者の比較
本学教職課程の特徴の一つは「教職に関する科目」について履修階梯があることです。履修階梯が履修規程上明確になったのは90年度からの教育課程からです。つまり、「教科教育法」を受講するための条件として「教育の思想と原則」と「教育心理学」の単位修得がこの年度の入学生から義務付けられたのです。これによって本学教職課程の質にいくらかの向上があったものと推測されます。
そこで、90年度入学の卒業生が出るが93年度を境に比較対照してみました。

①最高・最小・平均について、全体




②最高・最小・平均について、勤務先・教科別












































【考察2-(2):卒業年度が1972年度~92年度の回答者と93年度~2005年度の回答者の比較】
興味深い結果となりました。
全体の平均年数が、1972年度から1992年度の21年間と1993年度から2005年度の13年間を比較すると4.0年から3.1年に短縮しています。
平均年数を教科別に見ると、高校英語と養護を除くすべてで最近の13年間のものが短くなっています。
なお、本学卒業生の合格者数の実数は、その年度の教員候補者選考試験合格者数についてみると(合格者の卒業年度ではありませんが)、先の21年間で419人、後の13年間で539人となっており(本学統計。)、その数は有効回答者数の差(63人と102人)を一定反映しているといえます。
最近の13年間に本学教職課程は飛躍的とも言える成果を修めてきたと言えるかもしれません。
沖縄県における教員需要についての統計資料が存在します(山崎博敏『教員採用の過去と未来』玉川大学出版部、1998年、183~185頁。)。それによると確かに沖縄県の教員需要は90年代に入り増加傾向になりますが、近年の13年間が前の21年間を上回るということではありません。したがって、本学教職課程の「飛躍的な成果」は、「教育力の飛躍的向上」を示すものと理解できます。
この「教育力の飛躍的向上」は何に由来するのか。それこそが教職に関する科目の「階梯的配列」を始めとする「特色GP」で評価された取組の内容そのものなのだと言えるでしょう。すなわち、教職に関する科目の階梯的配列の他、少人数指導の教科教育法クラス、一人1時間以上の模擬授業、多様な体験的教育活動、ユニークな教育実習の事中・事後指導、盛んな自主的な正課外活動などです。

3.出身高校

出身高校

【考察3:回答者の出身高校について】
「高校力」という言葉があります(「大学より高校力」『AERA アエラ』2005年11月7日、No.59)。名門高校出身者の場合、大学での人脈より高校での人脈が就職や仕事・ビジネスでの成功の鍵を握っているといった意味の言葉です。教員採用は元より人脈によるものではありません。そうではなくて「高校力」とは人脈だけではなく高校で形成された諸能力をも指すというのも一面の真実ではないでしょうか。そうした関心から考察しました。
おおむね入学者数の多い高校の出身者が教員採用者としても多い結果となっています。つまり、特定の高校卒業者が突出しているというわけではありません。裏を返せば、本学の「大学力」の健在ぶりが裏打ちされていると言えましょう。

4.本学教職課程に対する意見や要望

【考察4:本学教職課程に対する意見や要望(自由記述)】
自由記述では、77人から回答をいただきました。
「在学期間中、教職課程においてきめ細かなご指導をして頂き、念願の教職に就くことができました。大学で学んだことが現在仕事を行う上での基盤になっておりとても感謝しております。沖国大からの教育実習生は学校現場での評価が高く、卒業生としてうれしい限りです。今後も知識や技能だけでなく、社会的なマナーを身につける為のご指導をお願い致します。」(中英32歳)
これが多くの方の最大公約数と言える代表的な記述でした。
感銘を受けたのは、「先生方の学生を大切にする気持ちがあたたかく私たちを勇気づけてくれ、教師になった今私も同じように生徒を大切にしていこうと日々頑張っています。」(中英39歳)というものでした。
「学生への接し方が彼らが教員となったときおのずと生徒の接し方に反映される」。これは私たちの教職課程で常に留意してきたことでありました。(『沖縄国際大学30年史本編』425頁。)そのことの大切さがこの記述には示されています。
本学教職課程に今後望まれる課題も提示されていました。
近年の傾向として実習生の中に沖国大生ということで自信過剰になり謙虚さを欠いたり優秀と思いこんでいる者がいるということです。
高校国語教諭の方からは本学出身の高校国語教員が少ないことから、専門教科の力量形成を望む声がありました。
その他、社会教育主事資格課程の復活や特別支援教育資格課程の新設、大学院での教科指導法の学習機会の提供の要望もありました。

総括

○本学教職課程の「教育力」の特徴と課題
  • 「生徒指導・生活指導のできる教員」「子どもの自立の過程に寄り添う校務にたずさわる教員」が多く育っていると言えます。
  • 生徒会指導担当経験者が群を抜いて多いことから、コミュニケーション力や調整力、生徒を動かす力量を有し、生徒から信頼される教員が多く育っていると言えます。
  • 「特色GP」で評価を得た内容の整備された1990年度以降の入学生あたりから本学教職課程は質・量ともに著しい成果をあげてきています。
  • 国語科を中心にして高校生を指導できる教科専門教養の形成が課題となっている可能性があります。
  • 実習生の中に沖国大生ということで自信過剰になっている者が出ているようです。十分に注意しなければなりません。
  • 卒業生教員からの助言は厳しくもありますが親身でもあります。今後の教員養成には現場との連携がより密接に求められています。卒業生教員の一層の協力を得ることが必要です。
○大切にしたいこと
「学生への接し方が彼らが教員となったとき自ずと生徒の接し方に反映される」ということに私たちはこれまで留意してきました。このことが「先生方の学生を大切にする気持ちがあたたかく私たちを勇気づけてくれ、教師になった今私も同じように生徒を大切にしていこうと日々頑張っています。」という卒業生の声となって表れています。
学生を育てる日常の私たちの構えが「子どもの自立の過程に寄り添う校務にたずさわる教員」を多く育てているとも言えるかもしれません。
この学生に接する構えは今後も大切にしていきたいと考えています。

(アンケート企画・分析責任者 総合文化学部教授 三村和則)

資料

アンケート依頼文書、アンケート記入用紙 (PDFファイル :120KB)

お問い合わせ先

教務部教務課では、特色GP事業の発展・推進に向けて、皆様からのご意見・ご感想をお待ちしています。

お問い合わせ・ご感想送付先:教務部教務課特色GP担当 E-mail: aafchr@okiu.ac.jp