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秋山 道宏

先生に聞いてみました

 平和学や社会学関連の授業と平和学ゼミ(演習Ⅰ・Ⅱ)を担当しています。研究活動では、戦後沖縄の地域や住民の視点から、沖縄戦体験がどのように継承されてきたのか、人々は軍事基地(米軍や自衛隊の)とどう向き合ってきたのか、といったテーマを探求しています。また、地元である南風原町では、平和ガイドの活動も行なっています。平和や戦争が鋭く問われる場所である沖縄で、好奇心をもち、動き、考え続ける学生を歓迎します。

どんな学生時代を過ごしていましたか?または熱中したことについて教えてください。
「自治の大事さに気づいた学生時代」
元々は法曹関係の仕事に憧れ、東京都立大の法学部に入りました。大学在学中は、アルバイトにも明け暮れましたが、大学「改革」という名の再編統合問題に巻き込まれました。学習環境の悪化も懸念されるなか、学生同士が議論し、行動するという自治の雰囲気に触れ、フタをしていた地元沖縄への関心が喚起されました。「戦後沖縄の人々はどう生活や人権を守ったのか」という問いを大学で再発見したことが今の研究につながっています。

今の学問を学ぶきっかけは?あるいは、学問の楽しさ、魅力について教えてください。
「試行錯誤のなかで得た沖縄を捉える視点」
大学時代に得た「戦後沖縄の人々はどう生活や人権を守ったのか」という問いは、一つの学問領域では捉えられないテーマとしての広がりがあるものでした。そのため、社会科学の基本的な考え方(経済学・政治学・社会学など)を広く学ぶなかで、歴史的なアプローチを重視した社会学や平和学という学問にいきつきました。社会経済構造の変容も見すえつつ、そこに生きた人々の「思い」や「苦楽」にまで迫れることがこの学問の魅力です。

学生に伝えたいこと
「世界を広げる学びを」
大学の4年間という時間は、長いようで短いものです。同時に、学問に正面から向き合うことができれば、とても密度が濃く、将来に向けて得るものが多い時間ともなります。先人たちが積み上げてきた英知を存分に吸収し、教員や友人たちと時には激論を交わし、世界を広げていってほしいと思います。将来どのような仕事に就くにせよ、きっと「知は力」となるでしょう。

Michihiro Akiyama
Michihiro Akiyama
秋山先生のご著書を読んでみよう!
秋山道宏2019年3月『基地社会・沖縄と「島ぐるみ」の運動:B52撤去運動から県益擁護運動へ』八朔社
秋山道宏ほか2019年5月『沖縄戦を知る事典:非体験世代が語り継ぐ』吉川弘文館
秋山道宏ほか2021年11月『つながる沖縄近現代史:沖縄のいまを考えるための十五章と二十のコラム』ボーダーインク

阿利 よし乃

先生に聞いてみました

 私は「民俗学」を専門としています。民俗学とは、人間の生き方や暮らしを歴史の変化のなかで捉える学問です。歴史といっても、文字で書き残されたものを対象とするのではなく、田んぼや畑での農作業や夏に行われる綱引きなどの年中行事も研究の対象です。人びとの暮らしの日常すべてが民俗学の研究テーマになるのです。フィールドワークで地域に分け入り、実際に人びとと関わり合いながら考えることができるのが民俗学の魅力です。

どんな学生時代を過ごしていましたか?または熱中したことについて教えてください。
「沖縄の祭りに夢中になった学生時代」
 大学2年生の夏休みの実習で初めての民俗調査を経験しました。その調査では小浜島の結願祭を観察しました。祭りに向けて村落の人びとが踊りの稽古に打ち込む姿、大人たちが真剣に話し合う様子、厳粛な雰囲気のなかで執り行われる祈願などを目の当たりにし、大きなカルチャーショックを受けました。それをきっかけに、3年次からは沖縄本島北部のウンジャミ、シヌグ、八重山の豊年祭、沖縄本島の綱引きの調査に通い続けました。

今の学問を学ぶきっかけは?あるいは、学問の楽しさ、魅力について教えてください。
「民俗学は人間の生き方を考える学問」
 民俗学の魅力は人びとの暮らしを観察し、人びとの話を聞くフィールドワークが基礎にあるという点にあります。ニュースで取り上げられるような有名人でなくても、地球上で暮らす全ての人に人生があります。子どもの誕生祝いやお年寄りの長寿を祝う儀礼、地域をあげて行われる祭りなど、人がどのように家族と向き合い、周囲の人びとと関わり合いながら生きてきたのかという人間の営みを知ることができるのが民俗学の楽しさです。

学生に伝えたいこと
「時間を最大限に活用しよう!」
 大学4年間は、人生の中でも好きなことにたっぷりと時間を使えるとても貴重で贅沢な期間です。授業だけではなく、ボランティアなどの社会的活動、他大学の学生との交流、サークル活動、留学、旅行など、たくさんの経験を積みましょう。気がついたらあっという間に4年生になっていたということでは、とてももったいないです。4年という時間を活用して興味や疑問を探求し、他者と交流することで自身の視野を拡げていきましょう。

Yoshino Ari
Yoshino Ari

市川 智生

先生に聞いてみました

 みなさんのご先祖はどんな状態を健康だと考え、どんな病気にかかり、何歳で亡くなったのでしょうか。わたしは、文字で残された情報や聞き取りを材料に、健康、医療、病気を通して日本の歴史を研究しています。このテーマは、かつては長寿県と言われ、マラリアやフィラリアなど多くの病気に苦しんできた沖縄にも縁が深いものです。講義では、実際の史料をみて皆さんに考えてもらう日本史を実践しています。自分が暮らす地域、国の歴史について、一緒に理解を深めましょう。

どんな学生時代を過ごしていましたか?または熱中したことについて教えてください。
「楽器ばかり弾いてました」
大学の管弦楽団に入ってチェロばっかり練習していました。大学生活の半分以上は確実に楽器を弾いていたはずです。音楽は結局趣味の範疇にとどまりましたが、大学卒業後に、横浜、京都、上海、長崎、沖縄と様々な場所に住む機会があり、どこでもまずは地域の市民オーケストラに加わって、大学の世界とは違う人間関係を築くチャンネルにもなりました。
大学では図書館を実によく使う学生でした。いわゆるお勉強のために図書館に通うということに興味は全くなく、端から端まで書架をみて「こんな本があるんだ」というようなものを手に取ったり、稀覯書に挟み込まれているメモを見つけたりということが好きでした。

今の学問を学ぶきっかけは?あるいは、学問の楽しさ、魅力について教えてください。
2年次に所属した日本近代史のゼミで、維新期の『熾仁親王日記』と戦後占領期の『内山岩太郎日記』を輪読したことだと自覚しています。1回のゼミで数日分くらいしか進みませんが、記載されていることをあらゆる角度から調べて、何を聞かれても答えられるように準備をするという緊張感と、一見して無味乾燥な記載内容が実は森羅万象とつながっており、それを自分で再現するのが歴史学の面白さなのだと気づきました。今でも当時の指導教員には深く感謝しています。
 その後、地元横浜の感染症の歴史を調べる過程で、外国人が外国語で生活する社会が存在することを知り、海外資料を通して日本の地域史を知ることの魅力に取りつかれました。いまでも毎年ロンドンやベルリンの文書館に出かけて史料調査を行っています。このような海外の調査や国際学会の場で、外国の研究者と交流することも学問の楽しさの一つです。

Tomoo Ichikawa
Tomoo Ichikawa
市川先生のご著書を読んでみよう!
永島剛・市川智生・飯島渉編2017年5月『衛生と近代: ペスト流行にみる東アジアの統治・医療・社会』法政大学出版局
福士由紀・市川智生・アレクサンダー R ベイ・金穎穂編2022年3月『暮らしのなかの健康と疾病: 東アジア医療社会史』東京大学出版会
市川智生「開港場・外国人居留地の歴史をひもとく史料:日本のなかの国際社会と感染症」2024年1月『深化する歴史学:史資料からよみとく新たな歴史像』大月書店

石垣直

先生に聞いてみました

 私は「文化人類学」や「アジア文化」関連の諸講義やゼミを担当しています。石垣島出身の私は、県外・海外での学びを通じて「文化人類学」という学問に出会いました。この学問分野は、人類社会・文化の多様性と共通性を探究する学問ですが、郷土の文化を世界的な視野から検討する際にも大いに役立ちます。私たちが生きる21世紀、グローバル化はさらに加速していきます。学生の皆さんには、ぜひ、世界・アジア的な視野で沖縄を考える姿勢を身に着けてもらえればと思います。

どんな学生時代を過ごしていましたか?または熱中したことについて教えてください。
 私は、小中高と部活(野球部)漬けであまり真剣に勉強して来なかったので、大学進学後はそれを反省し、英語や中国語の学習と文化人類学および関連分野の読書に熱中しました。その結果として「入院」(大学院進学)することになりましたが、高校までに鍛えた体力と忍耐力のお陰で、「退院」(大学院修士・博士課程修了)後も「病む/止む」ことなく研究を続けることができています。

今の学問を学ぶきっかけは?あるいは、学問の楽しさ、魅力について教えてください。
「より広い視野で自文化を考える」 高校を卒業後、大学進学のために生まれ島を離れ東京で生活をしていく中で、「自分が沖縄・八重山のことをよく知らない」という事実に気づかされました。私は、大学進学時は記者・マスコミ志望でしたが、学びを深める中で「人類社会・文化」という広い視野から「自文化」を考えることのできる文化人類学に魅かれていきました。様々な人と出会い、インタビューや参与観察を通じて人々と人生をシェアできる文化人類学は、私の天職です。

学生に伝えたいこと
「知行合一」 あらゆる情報が氾濫する現在、知識・情報を取得するだけであれば、大学に進学する必要はありません。しかし、本当の意味での「学び」は、「師」・「同輩」あるいは「他者」との「対話」を通じて、また「実践」を通じてこそ血肉化するものです。「大学」という場所は、こうした知的な出会いと実践を通じた「高度な知的訓練」を行う場所です。皆さんにはぜひ、「知」(知識・理解)と「行」(行為・実践)が不可分であることを意識しながら、学びを深めていってほしいと考えています。

ISHIGAKI Naoki
ISHIGAKI Naoki
石垣先生のご著書を読んでみよう!
石垣 直2011『現代台湾を生きる原住民:ブヌンの土地と権利回復運動の人類学』風響社
石垣 直2016「祭り・年中行事にみる沖縄文化の歴史と現在:ハーリー、綱引き、エイサー」沖縄国際大学(編)『大学的沖縄ガイド』pp.75-91 昭和堂
石垣 直2022「台湾:国連非加盟国において先住民族の権利擁護はいかに展開したのか」小坂田裕子ほか(編)『考えてみよう先住民族と法』pp.147-158 信山社

崎濱 佳代

先生に聞いてみました

 社会学の理論や研究手法の授業を主に担当しています。「社会学」。高校生にはなじみのない科目ですね。私たちが生きる社会には、さまざまな組織や規範、仕組みが存在します。家族・地域・学校・職場・世間・国家・国際社会…それぞれに組織があり、規範があり、役割があり、それらが組み合わさって、1人の人間の生活を応援したり、時には悩ませたりする仕組みを作り出します。
 「社会学」は、ありとあらゆる社会現象を研究対象とします。どんな組織や仕組みが存在するのか(社会構造)、それらが時代の流れと人々の意識や行動によってどのように変わっていくのか(社会変容)。一番大事なのは、社会の仕組みと個人の生活がどんな影響を及ぼしあっているのかということ。皆さん自身と社会の関係を見つめなおすヒントを提供したいと思っています。

Kayo Sakihama
Kayo Sakihama

新里 貴之

先生に聞いてみました

南九州から南島の考古学が専門です。主に、文字のない時代の土器、墓、交易、社会組織などを研究しています。沖縄を含む南島は小さな島々ですが、日本のなかでも一種独特な興味深い歴史を歩んできた地域です。その南島を、発掘調査という手法を用いて、歴史の断片を自らの手で掘り起こし、それらを科学的に系統立てて整理します。パズルのピースを埋めるように、過去を復元できた時の喜びは何にも代えがたいものです。

どんな学生時代を過ごしていましたか?または熱中したことについて教えてください。
「様々な体験ができる場所」 沖国大の考古ゼミ2年次で無人島の発掘調査実習に放り込まれて、発掘の大変さと楽しさを知りました。あれほどのキツイ現場は今まで経験したことがないので、どこに行ってもキツイと思ったことはありません。剣道部やスポーツ同好会、演劇部にも所属して大学生活を謳歌していました。考古学に真剣に向き合ったのは、4年次の卒論の時期で、考古学の楽しさを知り、当時沖縄には大学院がなかったので、県外の大学院へ進学しました。

今の学問を学ぶきっかけは?あるいは、学問の楽しさ、魅力について教えてください。
「ひとつをことをとことん突き詰めて」 考古学の魅力はやはり、埋もれたモノや痕跡の履歴を知ることで、過去の生活や技術、考え方に迫れることだと思っています。その調査方法は科学的に実施されており、一定のトレーニングなしにはできません。例えば、土器が1点出土した場合、それがその地点に当時からあったのか、流れ込んできたのかを把握するため、あらゆる方法で記録することから始めます。このデータの積み重ねることで、その土器の持つ歴史の一端が明らかになるのです。

学生に伝えたいこと
「本をよく読み、いろんな体験を」 大学生活の4年間は、健康で頭も柔らかく、あらゆるものを吸収することのできる人生で最もまとまった時間のとれる時期です。せっかく大学に進学したのに、学問に触れないで過ごすのは、あまりにももったいない。本をよく読み世界の裾野を広げ、先輩後輩とコミュニケーションを取り合って視野を広げ、体験したことのない様々な活動に参加して、世界の繋がりを知る。4年間では全く足りない、というのが理想的な学生生活だと考えます。

Takayuki Shinzato
Takayuki Shinzato
新里先生のご著書を読んでみよう!
新里貴之「島における先史時代の墓」青山和夫・米延仁志・坂井正人・高宮広土(編)『文明の盛衰と環境変動:マヤ・アステカ・ナスカ・琉球の新しい歴史像』岩波書店 193-205頁 2014年9月
新里貴之「貝塚時代後1期の土器文化」高宮広土(編)『奄美・沖縄諸島先史学の最前線』南方新社 20-44頁 2018年3月
新里貴之「墓と葬制」沖縄考古学会(編)『南島考古学入門』ボーダーインク社 96-100頁 2018年4月

月野 楓子

先生に聞いてみました

 沖縄から海外へ渡った人々の研究をしています。移民は過去の出来事と思われがちですが、世界には沖縄にルーツを持つたくさんの人がいて現在も沖縄への関心を持ち続けています。私自身は、そうした故郷から離れて暮らす人々の歴史や社会、文化について知ることを通して、何かを・誰かを想うということについて考えています。

どんな学生時代を過ごしていましたか?または熱中したことについて教えてください。
 アルバイトをしては旅行をする、音楽フェスに行くという学生時代でした。いかに安く長く旅をするかを考えることが得意ないわゆるバックパッカーです。高校~大学の時に出会った人や物、考えたことがその後の思考の基盤となっているように思います。

今の学問を学ぶきっかけは?あるいは、学問の楽しさ、魅力について教えてください。
 高校生の時の南米チリと大学生の時のスペインへの留学、いろいろな旅、アルバイトや民間企業での仕事の経験がつながって今に至ります。沖縄移民の存在によって別の世界にもたらされた音楽が現地社会に受容されるさまを目の当たりにしたことで海外における沖縄の文化について知りたいと思い、勉強を始めました。

学生に伝えたいこと
 異なる社会や文化に関心を持つみなさんと、自らの足元を出発点として一緒に学び、考えることができたら嬉しいです。

TSUKINO Fuko
TSUKINO Fuko
月野先生のご著書を読んでみよう!
『よりどころの形成史―アルゼンチンの沖縄移民社会と在亜沖縄県人連合会の設立―』春風社、2022年。

比嘉 理麻

先生に聞いてみました

 授業の面では、文化人類学や環境に関わる授業を担当しています。また研究の面では、環境保護と米軍基地反対運動の研究に携わっています。学問の世界では、人間が自身を世界の中心だと思い込んで自然を支配したために環境破壊に歯止めがきかなくなったという反省から、「人間中心主義批判」という動きがあります。私もそうした立場から沖縄の環境保護活動の研究を行うとともに、大規模環境破壊とも言える辺野古基地建設に反対する運動について研究しています。

どんな学生時代を過ごしていましたか?または熱中したことについて教えてください。
「泡盛と倫理学と旅行」 学部時代は東南アジアゼミに所属していました。ただ、倫理学で尊敬する先生がいたので、その先生の授業を全部受けていました。卒業研究では、ゼミの先生から「きみの身近な泡盛もタイ米でできているんだよ」と言われて、身近な沖縄とアジアの思いがけない繋がりに驚き、泡盛の酒造所でフィールドワークを行ない、卒業論文を執筆しました。あとは海外旅行が好きで、ベトナム、香港、フランス、ギリシャ、ドイツ、イギリスなど各国を旅行していました。

今の学問を学ぶきっかけは?あるいは、学問の楽しさ、魅力について教えてください。
「未知の世界のドアを開ける」 卒業研究で泡盛の酒造所で調査をしたことがきっかけで、「現場」の面白さを知り、大学院では文化人類学を専攻し、沖縄の市場で初めて人類学的なフィールドワークにのめり込みました。何より自分の身近にありながら実はあまりその内実を知らないことを主体的に調べて、学ぶことの楽しさに魅了されました。フィールドワークで自らの身をもって体験する実践知は、読書からだけは知ることのできない未知の世界を開いてくれます。

学生に伝えたいこと
「ひたすら読書を」 何かに思い悩んだら、ぜひ図書館へ。図書館は、先人たちの知性の宝庫です。本棚をざっと見渡し、気になったタイトルの本を開いてみてください。その時その時のあなたに寄り添う言葉に出会えるはずです。時に、行き詰まった「狭隘な」自己の殻を食い破る強烈な出会いがあるかもしれません。常なる変容を恐れず、懐にたくさんの先人たちの言葉を携えて、人生の旅路に備えてみてはいかがでしょうか。

Rima Higa
Rima Higa
比嘉先生のご著書を読んでみよう!
比嘉理麻2015『沖縄の人とブタ-産業社会における人と動物の民族誌』京都大学学術出版会。
比嘉理麻2021「市場から食卓へ-食の生命倫理」『食の世界を生きる-食の人類学への招待』(河合利光編)時潮社。
比嘉理麻2024「分かつ-豚が「汚くなる」とき」『汚穢のリズム-きたなさ・おぞましさの生活考』(酒井朋子・中村沙絵・奥田太郎・福永真弓編)左右社。

深澤 秋人

先生に聞いてみました

自己紹介
 専門分野は、近世琉球の対外関係史と尚家文書の史料論です。ここでの対外関係史とは、鹿児島や福州(福建省)でのヒト・モノ・情報など外交や貿易の最前線の様相を明らかにすること、日本や中国との関係が琉球の国家や社会にとってどのような意味を持っていたのかを検討すること、そして、最前線となった場がその地域でどのように位置づけられるのかを現地を訪れて考えることだと思います。尚家文書(那覇市歴史博物館蔵)が活用できるようになりました。対外関係史に関わる史料論の構築に取り組んでいます。

どんな学生時代を過ごしていましたか?または熱中したことについて教えてください。
「調査旅行で得たこと」紆余曲折あって國學院大學文学部第二部史学科に入学しました。一・二年次は大学に足が向かず、映画館で中国映画を観るのに熱心でした。はじめて沖縄を訪れたのは三年次の頃です。東京港からフェリーで二泊三日かかりました。四年次ゼミでは日本古代史ゼミに所属し、卒業論文作成のため九州・奄美大島を本格的に調査旅行しました。歴史の場に立つことの大切さ、そこに移動するまでの大変さ、妥協しない準備の必要性を知りました。

今の学問を学ぶきっかけは?あるいは、学問の楽しさ、魅力について教えてください。
「渤海の研究史に接して」7世紀末から10世紀前半にかけて北東アジアに渤海という国家が成立していました。現在の中国東北地方、朝鮮半島北部、ロシア沿海地方が領域でした。大学二年次の講義で、日本を含む各国での研究史は近現代史と関係があるとの説明に接し、現在に生きる私たちが、歴史や歴史学そして国家と向き合うには、「緊張感」が必要なことに気づきました。今でも肝に銘じています。学問の楽しさは己への厳しさと表裏一体ではないででしょうか。

学生に伝えたいこと
「ご参考まで」時間・書類・お金の扱いをきっちりすること、同じ理由で失敗を繰り返さない努力をすること、結果として他者から信用されること、これだけは敵わないと思わせるものがあること、円満退職できるようになることを心掛けて日々生活しています。大学生も教員も社会の人です。進路選択や学生生活を送るうえで少しでも参考になれば幸いです。

Akito Fukazawa
Akito Fukazawa
深澤先生のご著書を読んでみよう!
宮城弘樹ほか編2023年4月『大学で学ぶ沖縄の歴史』吉川弘文館
深澤秋人2014年1月「東京琉球館役所の変遷―尚家文書を用いて―」『琉球 交叉する歴史と文化』pp.242-266勉誠出版
深澤秋人2011年9月『近世琉球中国交流史の研究―居留地・組織体・海域―』榕樹書林

藤波 潔

先生に聞いてみました

 私自身の専門は、19世紀のイギリスがアジアの諸国家や諸地域とどのような関係を、なぜ構築したのかを研究しています。社会文化学科では、明治以降の沖縄の歴史を対象とするゼミを担当しています。また、教職課程の担当もしており、主として中学校社会科教員の養成を担当する教職ゼミや外国史の授業を担当しています。
 社会文化学科の学生だけで構成しているサークル「SmiLife(スマイライフ)」や、吹奏楽部、ハンドボール部の顧問も務めています。SmiLifeは、修学旅行生の平和学習を支援する活動を主としていることから、私自身も県外の中学生、高校生を対象とした講演を多数おこなっています。
歴史学は「おぼえる」「暗記する」学びではありません。根拠となる歴史資料に基づいて「考える」ことが学びの基本です。大学で「考える歴史」を一緒に学びましょう。

どんな学生時代を過ごしていましたか?または熱中したことについて教えてください。
 私は、高校まで北海道で生活し、大学進学にともなって東京で暮らしました。初めての一人暮らしで生活費を得る必要もあり、塾講師のアルバイトをしていました。このアルバイト経験で「教えること」の魅力に取りつかれました。
大学では、2年の時に恩師である岸田達也先生と出会ったことが、私の人生を方向性を決めることにつながりました。岸田先生の講義で「歴史学の歴史」や「帝国主義」について学んだことがきっかけで卒業論文のテーマもイギリスの帝国主義政策にしました。
他方で、中学生のころから続けていた吹奏楽のサークルにも所属し、トロンボーンと指揮を担当しました。サークルのメンバーで合宿にいったり、演奏会を開催したりしたことは、良い思い出です。

今の学問を学ぶきっかけは?あるいは、学問の楽しさ、魅力について教えてください。
 子どものころから「学校の先生」という仕事に興味を持っており、将来は、北海道の学校で歴史を教えたいという希望を持っていました。しかし、上述の通り、恩師との出会いで「歴史学」という学問の奥深さを知り、歴史資料に基づいて過去について考えるという行為に惹かれました。
その後、大学院生の時、台湾総督府が残した公文書資料の目録編纂のチームに加えていただき、本物の歴史資料から読み取れることの豊かさに驚かされるとともに、過去の人たちが残した記録の重要性に気づきました。

Kiyoshi Fujinami
Kiyoshi Fujinami
藤波先生のご著書を読んでみよう!
「第4章 プライス調査団との対峙」宜野湾市史編集委員会編『宜野湾市史第8巻戦後資料編Ⅱ 伊佐浜の土地闘争(資料編)』宜野湾市、2019年3月、56-67頁。
「摩文仁-平和祈念資料館、平和の礎、林立する慰霊塔」沖縄国際大学宜野湾の会編『大学的沖縄ガイド-こだわりの歩き方』昭和堂、2016年3月、57-69頁。
「記憶と継承 記憶・保存・活用」沖縄国際大学公開講座委員会編『世変わりの後で復帰40年を考える(沖縄国際大学公開講座22)』東洋企画印刷、2013年3月、251-272頁。

宮城 弘樹

先生に聞いてみました

考古学や博物館の授業を主に担当しています。地下に埋もれた歴史を発掘するとともに、多くの博物館の展示では、歴史資料の一番はじめに考古資料が並んでいます。数万年前にやってきた私たちの祖先はいったいどんな人たちだったのか? 数千年前の沖縄にどんな暮らしがあったのか?琉球のグスクを発掘するとどんな物が出土するのか? 沖縄の遺跡は謎が多く、掘れば掘るほど新しい発見がいっぱいです。単なる知識だけではなく、幅広く、奥深い経験と科学的な「モノ」の見方の習得を目指し、考古資料にたくさん触れながら学びます。好奇心あふれ、情熱ある学生を歓迎します。

どんな学生時代を過ごしていましたか?または熱中したことについて教えてください。
「発掘に明け暮れた学生時代」 中学生の頃には博物館を知って、考古を学びたくて沖縄国際大学に入学しました。学生時代には、全ての夏休みと冬休みを行政の発掘調査のアルバイトに明け暮れました。二年次の冬には福岡の古墳、三年次では鹿児島県で旧石器時代の遺跡調査に参加しました。発掘調査のアルバイトは考古学の技術を習得できるし、お金ももらえて、また同じ目標を持つ人が集まって切磋琢磨し、たくさんの経験を積むことができました。

今の学問を学ぶきっかけは?あるいは、学問の楽しさ、魅力について教えてください。
「行政の実務経験を積んだ今帰仁と名護」 あらゆる学問が言語によって語られますが、考古学ではモノを使って歴史を語っていく。そのモノを実際に触ることができ、五感で歴史を感じることのできる考古学にはまりました。大学で教員になる前には、地方公務員として働きました。今帰仁城跡で15 年調査に携わったので思い入れのある遺跡です。その後、名護博物館で仕事をする機会があって、展示方法がとてもユニークで、活動や展示内容ともに理想的な博物館と考えています。

学生に伝えたいこと
「学びという自分への投資を」 大学4年間という時間は、豊かな教養と、夢を叶えるための能力や資格を得るためのかけがえのない時間です。しかし、スマホ片手の知識で、漫然と日々を過ごしては決して成長しません。継続的に学び、本を読んで潜思し、友人と時に議論を交わし切磋拓磨しましょう。その時間の全てが、必ず将来のあなたの資本になるはずです。

HIROKI  Miyagi
HIROKI Miyagi
宮城先生のご著書を読んでみよう!
片桐千亜紀・宮城弘樹・渡辺美季2014年11月『南西諸島の水中文化遺産~青い海に沈んだ歴史のカケラ』ボーダーインク
宮城弘樹2022年4月『琉球弧の考古学』啓文舎
宮城弘樹ほか2023年4月『大学で学ぶ沖縄の歴史』吉川弘文館