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教育支援情報

対面朗読室の紹介

1994年4月視覚障害学生の入学を機に全盲学生の支援を目的につくられました。点訳のための機器、パソコンや点字プリンター、スキャナーを一つ一つ揃えていき、学生ボランティアを募集しました。

 一言に視覚障害者と言ってもみんな障害の度合いが違うわけですから新しい学生が入学する度に支援内容を少しずつ変えながら対応してきました。
 既に7名(点字使用5名、拡大文字資料2名)が卒業していきました。

支援内容

(1)教材・参考資料の点訳

 現在の点訳はほとんどパソコン点訳で行われています。毎日の講義に間に合わせる為、かなりのスピードが要求されること、また挿入・削除が容易なことがその理由です。
 入力は点字ワープロ・墨字のワープロ・スキャナー読みとりのいずれかの方法で行い、必要に応じて変換ソフト(EXTRA)で点字ファイルにし点字熟知者による校正・編集を行います。

【 パソコン点訳の手順 】

1)教科書(墨字)
↓スキャナー読みとり
↓ワープロ入力(テキストファイルへ変換)
↓点字ワープロ入力
(テキストファイル)
 | ①墨字校正
 ↓ ②点字変換
2)点字ファイル
①校正、編集、目次付け
②表紙、原本ページ付け
③点字印刷、製本
3)点字教科書完成

*点字教科書を作成する時の注意点
 講義中にどこを先生が説明しているのかがすぐわかるように、墨字のページや表・グラフの位置などを明記します。また、通常よりも詳しい目次も不可欠で、時には章毎に付箋を貼ってわかりやすくします。常に講義で使うことをイメージして作成していきます。

*地図や図形について
 文字で表せない地図や図形は立体コピー機を使用します。あまり複雑なものは出来ませんので、まず資料の大切な部分だけを抜き出して判り易い図を作成します。そしてカプセルペーパーにコピーした後、立体コピー機に通します。すると黒い線が受けあがって指に触れることで認識が出来る図形が出来上がるわけです。最後に説明文などの書かれている点字のシールを作って貼ります。

(2)使用機器の紹介

 対面朗読室は小さな個室です。その中で常時動いている機器類について説明します。
  • パソコン(職員用)
    通常の事務に必要なソフト、点字ワープロソフト、点字変換ソフト、音声ソフト、ファイル結合ソフト、OCRソフト
  • パソコン(学生用・点字プリンター接続)
    通常のソフト、点字ワープロソフト、音声ソフト(2種類)、点字変換ソフト
  • パソコン(点字プリンター接続)
    点字ワープロソフト、音声ソフト、点字変換ソフト
  • 墨字プリンター
  • 点字プリンター(2台)
  • スキャナー
  • 立体コピー機
  • 拡大読書器

(3)学外団体との連携

 対面朗読室では出来ない専門書の点訳は学外の団体へ依頼しているがその連絡、打ち合わせ、相談等を行っています。2003年度は「韓国語」の講義を登録したのでそのほとんどをハングル点訳グループ「サランバン」にお世話になりました。

(4)卒業論文・レポート提出について

 視覚障害学生本人が音声ソフトがインストールされているパソコンのワープロソフト(ワードなど)を使用して入力します。その後、漢字チェックや書式を揃えて印刷します。もちろん、文章表現や内容は全て学生本人の書いたままで提出します。

(5)試験について

 点訳用の試験問題を前もって渡してもらい、担当教官と相談の上試験時間を1.5倍に延長して別室(対面朗読室)で行います。その後、視覚障害学生が提出した点字解答を墨訳して担当教官に手渡しします。
※他の学生に比べて決して特別扱いにならないよう配慮することが必要。

(6)歩行介助について

 年度始めなど講義開始前に講義教室・通学路の確認を行い、教室変更など特別の場合を除いて通常の講義では歩行介助は行っていません。通学・学内移動は独りで出来るように指導します。

学生ボランティアの育成

(1)学生の福祉意識を高める

 同じ学内に白状を持った障害者がいるだけで健常の学生に与える影響力は大きい。さらに、障害者と健常者という隔たりをなくし、自然に「GIVE AND TAKE」の助け合える環境を作り出すことを目標としています。視覚がない世界への素朴な疑問を自然に口に出し笑顔で答えられるような空間を作り出していき、決して福祉が特別なものではなくすぐ傍らにある身近なものなのだと感じて欲しいと思います。

(2)点字講習会について

 講習期間を1年に設定し、週1時限(90分)行う。点字板を使用し、点字の基礎的知識から校正に必要な専門的知識まで指導。1点1点、手で触れながら練習。また視覚障害者の意識に触れられるよう読む立場にも重点をおいての指導も行う。簡単な児童書などの点訳の完成をもって点字講習の終了とする。

 ※近年はパソコンの普及により入力そのものは通常のワープロで出来るので点字は全くわからなくても点訳の手伝いは出来ます。点字について詳しく知りたい方は簡単点字教室を見て下さい。

問題点

(1)点字熟知者、特に校正者・英語点字修得者の不足。これからも点字講習会を続けて点訳ボランティアの養成に力を入れていきたい。

(2)点訳書の不足。講義に使うテキスト、資料の点訳に追われ参考文献を提示されてもほとんどそれに対応できない。専門書になると他団体で点訳されている場合もほとんどないのが現状。

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