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簡単点字教室

 「点字」とは皆さんも知っている通り視覚障害者が読み書きする時に使うポツポツとした文字です。最近では公衆電話や現金支払機、歩道橋、それから缶ビールにも点字が付けられているので、全く点字を知らない人もそっと点に触れてみたことがあるのではないでしょうか。私は点字を覚える前はとても難しくてどこか外国の言葉のような印象を持っていました。でも点字は皆さんが思っているよりはるかに簡単です(特に晴眼者には!)。
 では点字について簡単に説明しましよう。

INDEX

点字の構成

 まず、点字は一マスの中に6つの点が並んでいます。その点のどれが突起しているかによって字を読み分けるわけです。つまり視覚障害者は指に触れる点の位置で書いてある文字を判断しています。それから点字には漢字はありませんから(一般には漢点字はほとんど使いません)カナの五十音さえ読めればOK!!
 まず6つの点の構成についてお話ししましょう。6つの点には下のようにそれぞれ番号がついています。

読む面、書く面

 ここで注意して下さい。点字板で点字を打つ時は点筆といわれる先の尖ったもので点字用紙を押してへこませて点字を書きます。そして視覚障害者が読む時はその紙をひっくり返して突起している部分に触れて読むわけです。つまり点字は読みの面(凸面)と書きの面(凹面)が全く反対になります。

 「ややこしい~!」と思った人、大丈夫ですよ。晴眼者は突起していてもへこんでいても見て読めるわけだし、点字板では「書く面=凹面」だったのに対し、パソコン点訳ではキーの設定で凸面でも凹面でも点訳者の好きな方で打てるようになってます。つまり読み書きどちらでも「凸」か「凹」、どちらか1つだけ覚えれば大丈夫です。でも裏返せば突起している点しか読めない視覚障害者はそう言う訳にはいきません。読み書きのために全く逆の二つの文字を自由に使いこなしているわけですからすごいですよね。

 この簡単点字教室では読むことに重点を置き、全て「凸面」で説明します。

(1)ひらがな

1)母音
ではまず、母音について説明します。「あ・い・う・え・お」は上の6つの点の内、①②④の点だけで出来ています。この5つは基本となりますのでとにかく覚えて下さいね。

あ行

2)子音
次に、上の「あいうえお」に子音の役目をする③⑤⑥の点を増やしていきます。例えば「か行」はの点を加えます。

か行

 あとは同じ要領で次の点を加えると「さ・た・な・は・ま・ら行」が出来ます。

「さ行」…⑤⑥ 「た行」…③⑤  「な行」…
「は行」…③⑥ 「ま行」…③⑤⑥ 「ら行」…
さ行、た行、な行、は行、ま行、ら行


 ここまではとても規則正しく出来ていますが、「や行」と「わ・を・ん」、小さな「っ」はちょっと不規則ですので覚えて下さいね。それから最後に書いてあるのは「長音」と言って伸ばす音です。点字ではとてもよく出てきます。使い方については点訳のルールを読んで下さいね

や・ゆ・よ・わ・を・ん・っ・ー

3)濁点・丸点
次は「が」や「ぱ」のような“濁点”や“丸点”のつく言葉についてです。これも非常に簡単です。それぞれ2マス使って表します。例えば「か」の前に“の点”を付けると濁点の「が」になり、「は」の前に“⑥の点”を付けると丸が付き「ぱ」になります。とても単純でしょう!?つまり、点字を読むときは“の点”が指に触れたら次は濁音、“の点”が触れたら丸のつく文字だと分かる訳です。

が行
ぱ行

 もちろん他の「ざ行・だ行・ば行」も同じように“の点”を前に付けるだけです。

ざ行
だ行
ば行

4)小さな「ゃ・ゅ・ょ」
これでほとんどの点字が読めるわけですが、もう少し頑張ってみましょうね。次は小さな「ゃ・ゅ・ょ」についてです。濁点や丸が付く文字は“の点”と“の点”を使いましたが、同じように2マス使って“の点”を前に置いて表します。「か・く・こ」の前に“の点”を置くと「きゃ・きゅ・きょ」になります。「か・く・こ」が「きゃ・きゅ・きょ」になるというのは皆さんにはピンと来ないかもしれませんが、規則自体は簡単ですので大丈夫ですね。
きゃ
きゅ
きょ
 他の「ゃ・ゅ・ょ」も同じように出来ます。
しゃ
しゅ
しょ
ちゃ
ちゅ
ちょ
同様に下のように続きます。
     「な・ぬ・の」   「にゃ・にゅ・にょ」
の点”+「は・ふ・ほ」 → 「ひゃ・ひゅ・ひょ」
     「ま・む・も」  「みゃ・みゅ・みょ」

 それでは「ぎゃ・ぎゅ・ぎょ」のように濁点の付いている字はどうなるのでしょうか?そうです、もうお判りですね。下のように“④⑤の点”を前置します。ついでに“④⑥の点”を前置する「ぴゃ・ぴゅ・ぴょ」も書いておきますね。
ぎゃぎゅぎょ
じゃじゅじょ
びゃびゅびょ
ぴゃぴゅぴょ
 ご苦労様でした。これで「ひらがな」は終わりです。とりあえずこれだけ解ればかなり点字は読めますよね。どうでしたか?とても規則正しく出来ているでしょう!きっと皆さん、点字の簡単さに驚かれたと思います。

 では、みなさん身の回りの点字を読んでみましょう。例えば、下の例のような公衆電話や自動現金支払機、それから最近はビールの缶、デパートや公園等の公共施設、歩道橋の手すりにエレベータなどにも点字がついています。全く点字を知らなかった頃は見えなかった(見ようとしなかった)点字も今のあなたには見えてくるはずです。

(2)数字

次は数字ですが、これは下の数符を使えば「あ行」と「ら行」で簡単に表すことが出来ます。

数符

例えば、「あ・い・う」は数符を前に置くと「1・2・3」に変わります。
1
2
3
残りの「4~0」は次のように書きます。

4.5.6.7.8.9.0

 皆さん、見て判るように数字は「あ行」と「ら行」が順番に並んでいるわけではありません。「あ・い・う・る・ら・え・れ・り・お・ろ」の順になっています。「え~!!」と言わないで下さい。実は日本語では、一見バラバラに見える順番ですがアルファベットの「aからjまで」の規則正しい並びになっているのです。つまりこの数字とアルファベットは日本だけではなく、世界中共通して使えると言うわけです。すごいですよね!
 では実際にはどういう風に使われているのでしょうか?皆さんは点字の付いたエレベータを見たことはありませんか?最後に例を2つ挙げて数字を終わります。

(3)アルファベット

 次はアルファベットですが、これは数字と同じように外字符を使って表すことが出来ます。判りやすいように数字の時と同じように説明していくことにしましょう。実際の点訳にはひらがなや数字ほど頻繁に出てきませんが、説明しておきます。

外字符

 例えば、「あ・い・う」は外字符を前に置くと「a・b・c」に変わります。
a
b
c
 続きの「d~j」は次のように書きます。

d.e.f.g.h.i.j

 このように点字ではひらがなの「あ」を表す「①の点」が前に数符をつけると数字の「1」になるし外字符をつけるとアルファベットの「a」になります。たった6つの点で言葉を書き表すためにいろいろ工夫されているわけです。

 では「k」から後のアルファベットはどうやって書くのでしょう。それはひらがなの勉強を思い出してください。同じ要領で今まで使った点字に「③の点」や「⑥の点」を足すことによって出来上がります。

k.l.m.n.o.p.q.r.s.t

u.v.w.x.y.z

※「w」だけはルールから外れていますが、点字の出来た背景を知れば理由が分かりますよ、興味のある方は調べてみてください。ヒントは「点字はフランス生れ」です。

大文字の書き表し方(アルファベット)

 ここまで説明したのは全て小文字の表記法です。でも点訳する時に出てくるのは「CM」や「TV」のような大文字です。どうやって書けばいいのでしょうか?
大丈夫!下の例を見ればすぐ分かります。


 アルファベットの大文字を書くには「大文字符」(⑥の点)を使います。

大文字符

⑤⑥の外字符をつけた後に大文字を1つ打てば頭文字だけ大文字になります。2つ打てば全部大文字になります。
そこで、注意!大文字符は2つまでです。アルファベットの字数が3つでも4つでも大文字を2つ重ねればそこに書かれているアルファベットはマス空けされるまでは全て大文字として読まれます。
 では、いくつか例を見てアルファベットの説明を終りましょう。

点訳のルール

 このように点字はたった6つの点で構成されています。点訳する場合は原文を正確にひらがなにすることが要求され、さらに「かな・数字」の他にアルファベット・化学記号・音符等々多くの文字を書き分けるわけですから、とても規則や記号の多い文字です。つまり、点字はとても規則正しく出来ていて入口は広いけれど、奥の深いものだということです。

 ここではその規則の中から基本的な3つについて解説します。

(1)助詞の「は・へ」

 視覚障害者は、耳から入ってくる音を中心に考えますので助詞の「~は」「~へ」は、点字では発音に忠実に「~ワ」「~エ」と書きます。つまり「私は外国へ行ったことがある」は「ワタシワ ガイコクエ イッタ コトガ アル」となるわけです。

★しかし、助詞の「を」は「オ」ではなく、そのまま「ヲ」と書きますので注意して下さい。

 これは余談ですが、先日、生まれつき見えない方から何故「わ」と発音するのに墨字では「は」と書くのかと問いつめられ「う・・・??」と言葉に詰まってしまいました。当然の疑問ですよね!

(2)伸ばす音(長音)

 発音に忠実に書かなければいけない文字がもう一つあります。点字では「長音」と読んで“②⑤の点”で表記する”伸ばす音”です。
 例えば、「学校」と言う言葉は「ガッコウ」というより「ガッコー」と発音し、「道路」は「ドウロ」ではなく「ドーロ」になっていると思います。このように伸ばして発音する音は点字では「ウ」ではなく「長音」を使います。

 上の例の「道路」や「学校」は点字で書くと次のようになります。

(3)分かち書きについて

 「分かち書き」とは読み手が意味を理解しやすいように、1マス開けて文章に区切りを入れることを言います。点字には漢字がありませんのでひらがなだけの文を読みやすくするためです。
 先に挙げた「ワタシワ ガイコクエ イッタ コトガ アル」という文が全くマス開けされていなかったらどうでしょう?「ワタシワガイコクエイッタコトガアル」。とても、読みにくいですね。文章を理解しやすくする為に、単語や意味のまとまりで1マス開けるのが分かち書きです。

 いくつか例文を挙げてみましょう。


「沖縄国際大学は沖縄県宜野湾市にあります。」 「オキナワ コクサイ ダイガクワ オキナワケン ギノワンシニ アリマス。」
「昨日の運動会で1等になった。」「キノーノ ウンドーカイデ 1トーニ ナッタ。」
「目が見えなくても工夫と努力で、パソコン・旅行・料理・編み物、何でも一人で出来ますよ。」 「メガ ミエナクテモ クフート ドリョクデ、 パソコン・ リョコー・ リョーリ・ アミモノ、 ナンデモ ヒトリデ デキマスヨ。」


 分かち書きは点字には必要不可欠なものなのですが、実はこの「分かち書き」というのは点字を勉強するボランティアさんの最大の難関です。点字の勉強は90%以上「分かち書き」に費やすと言っても良いくらいです。

 さあこれで点字についての解説は終わりです。どうでしたか?少しでも目の見えない世界に触れて頂けたでしょうか。点字はもともとナポレオンの時代に敵に見つからないよう暗がりでも読めるよう考えられた暗号が基になっていると言われています。

 さあ、皆さん、身近にある点字を読んでみて下さい。外国語を1つマスターした気分になれますよ。

点訳とその現状

(1)点字本の不足

 ここ数年の間にパソコンの普及により、点訳は点字板で打っていた頃と違って訂正・挿入が非常に簡単になり、より多くの点訳本を視覚障害者に提供できるようになりました。またネットワークを使うことによって一つのデータをいろいろな地域の複数の方に利用して頂けるようになり、視覚障害者を取り巻く環境はかなり改善されてきています。

 しかし、私たち晴眼者と比べればやはり比較にならないほど点字本の絶対数が少ないのが現状です。「何を読もうか」ではなく「何が読めるか」から始まる本選びは以前変わっていないような気がします。

(2)墨字ワープロでの点訳

 このホームページの活動内容の教材・参考資料の点訳でも書いたように、点字変換ソフトを使えば点字を知らなくても普通の(墨字)ワープロを使って点訳が出来ます。

 点字に興味のある方は、まず自分の出来ることから始めてみてはいかがでしょうか。
 このページは要望があれば少しずつ書き加えていきたいと思います。ご要望や点字に対しての質問等がありましたらどんどんメール下さいね。待ってます。

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