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日本文化学科のブログ

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【「琉球言語から多文化共生を考える」研究室のご紹介ーー西岡敏先生「ゼミナール入門」より】

研究室・ゼミナール紹介
日本文化学科では、3年生になると各先生の研究室に所属し、卒業研究を進めていきます。2年生の後期は、3年生からのゼミナールを選択する時期に当たります。
日本文化学科には、2年生の必修科目として「ゼミナール入門」という科目があります。毎回、各先生が研究室での研究内容をさまざまな趣向を凝らしてプレゼンし、2年生のゼミ選択の参考にしてもらっています。



11月18日の「ゼミナール入門」では、琉球文化コースを担当している西岡敏先生が登場。この日の授業内容をリライトしますので、受験生の皆さんには、この連載を通して日本文化学科で学べるカリキュラムのイメージを広げてもらえるとうれしいです。

〇「琉球語」とはなにか?
琉球語研究のスタートとしてまず考えておかないといけないことは、「琉球語」の定義です。
西岡先生によると、琉球語が話されてる範囲は琉球列島(奄美諸島・沖縄諸島・八重山諸島・宮古諸島)で、その地区は「琉球弧」とも言われます。この中には、有人島は約50島あり、約150万人ほどの人口がいるとされています。

「琉球語」という言葉には他にもいろいろな呼び方があります。例えば、「沖縄方言」「南島語」「琉球列島の言語」「うちなーぐち」「しまくとぅば」などなど。
最近は「うちなーぐち」という言葉もよく耳にするようになりましたが、「うちなー(沖縄)ぐち(口=ことば)」と言うと宮古・八重山・奄美の人は違和感を感じるとも言われています。
例えば、宮古の人は自分達の言葉を「ミャーコ(宮古)フツ(口)」、八重山の人は「ヤイマ(八重山)ムニ(ものいい)」と言って狭義の「うちなーぐち」と区別しているそうです。
そうした違和感を解消させるために2006年に沖縄県議会が決めた名称が「しまくとぅば」。最近新しくできた名称であるため昔からの話者は少し違和感を持っている人もいるそうですが、琉球語をどう表現するか、ということだけでも卒論のテーマになりそうな、大きな課題が隠されているんですね。



〇琉球語が置かれた厳しい環境
西岡先生の話では、琉球語圏内には、800以上の集落(=シマ)があるそうです。そして、「飲む水が変われば言葉が変わる」という言葉があるほど、琉球語には多様性があります。そのため、北琉球諸語(奄美語・国頭語・沖縄語)と南琉球諸語(八重山語・宮古語・与那国語)では、全く言葉が通じないとされ、15世紀頃に宮古島から、沖縄島に渡った人は沖縄語になれるまで3年ほどかかったとも言われています。

こうした多様性をふまえて、2009年2月にユネスコによって消滅の危険性がある言語に指定されました。日本県内には8つの消滅危機言語かあるのですが、
・アイヌ語(極めて深刻)
・八重山語、与那国語(重大な危機)
・八丈語、奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語(危険)
となっており、危機的な言語の内、なんと6つが琉球語となっています。西岡先生の研究室では、こうした危機的な言語を次の世代にどう継承していくか、ということをテーマにした研究を中心としているそうです。

〇琉球語の歴史をみることも研究テーマ!
西岡先生の研究室では琉球語だけにテーマか限定されているわけではありません。特に大事なのが、日本の歴史の中に位置づけて琉球語を見つめる、という視点です。
沖縄では、標準語励行運動が長く続いてきました。こうした運動は、1879年に琉球処分、その翌年からはじまったとされています。具体的には、琉球語→日本語の教科書や方言札などの取り組みがありました。

危機言語の復興運動は沖縄ではまだ始まったばかりですが、海外の事例が参考になるとも西岡先生は語ります。
例えば、ハワイ語も危機言語の1つとされますが、ハワイ大学のハレ・オーレロ(言語の家)というスクールでは、ハワイ語でしか話せない、という教育プログラムに取り組んでいます。また、ハワイ語の教科書、ハワイ語で会話する幼稚園やハワイ語で教育を行う(理科や数学など)小中高もあるそうです。沖縄の学校教育での可能性も探っていく必要がありそうです。



〇西岡先生の研究室の活動はどんな感じ?
西岡先生の研究室のテーマ・特徴はずばり以下の3点です。
①しまくとぅばを知る、わかるようになる!
②フィールドワークを重視している! (去年与論島、今年は石垣島に行ってきました!)
③しまくとぅば再生への実践的な活動に取り組む! (獅子舞を行って話者と交流したり、琉球語で人形劇などの研究をしている学生もいあす
このうちどれか1つにピント来たら、ぜひ西岡先生の研究室で学び、高め合いましょう。

◎西岡先生からの一言
沖縄を中心に色々なことを学べ、かつ将来に結び付けることができる可能性のあるゼミだと思います。沖縄について学びを深めることは、教職を目指す人、司書を目指す人にとってもとても大事ですし、文化コンテンツを活かした観光業や公務員と言った職業にも役立ちます。西岡ゼミは企業内定率も高く、教員採用試験合格者もたくさん出ています。琉球言語・文化に興味のある人はぜひ選択支のひとつとして考えてほしいです。

次回の「ゼミナール入門」の担当は、日本近現代文学担当の黒澤亜里子先生です。お楽しみに!