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日本文化学科のブログ

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【連載:研究室に行ってみよう⑧ 国語教育学研究室ー桃原千英子先生インタビュー】

研究室・ゼミナール紹介
日本文化学科に所属する12人の専任教員をリレー形式で紹介していく連載の第7回目。今回は、お待たせしました! 国語科教育学担当の桃原千英子先生の登場です。
国語の先生を目指してAO入試にエントリーした受験生の皆さんも多いと思います。桃原先生から、AO面接試験に向けての受験生の皆さんへのアドバイスも最後の方に掲載しています。ぜひご覧ください。


1.研究対象
 桃原ゼミは、中高の国語教師を目指す学生を対象とした、国語教育学研究室です。
 国語の教科書をめくると、小説や説明文などの「読むこと」、スピーチやディベートなどの「話すこと・聞くこと」、本のカバー・帯作りや意見文などの「書くこと」、漢字や文法などの「言語事項」のように、幅広い領域で構成されていることに気付きます。
 教師になるには、それぞれの教材に関する深い知識を持つことは大前提です。その上で、一つ一つの教材(素材)をどのように指導すれば、子供達が主体的に学び、思考を深め、自らの力にしていけるのか。学びの楽しさを感じられるようになるのかといった、“調理法”のようなものを考えていかなければなりません。
 大学の教職課程では、「国語科」の教育方法に関する国語科教育学の講義が2年次から始まります。言葉の教育として学校で行われる国語科は、学習指導要領の観点からだけではなく、普遍的にどのような本質を持っているのか、班のメンバーで理論と実践例を分析し発表していきます。そして3年次からは、子どもの学習場面に寄り添い実際の学びの姿を把握、分析するための力をつける、臨床教科教育学関係の講義も開かれます。ゼミは3年からスタートするのですが、殆どのゼミ生が2年次の教科教育法の班発表の経験から、教育に関する関心や課題、疑問を掘り下げて、教育学の知見をもとに探究しています。
 学校での現場経験の無い大学生ですので、なかなか学習者の課題や実態に迫れない部分もありますが、①国語教育学
②臨床教科教育学(子どもの学習の実態をもとに、授業を工夫改善していく)の二つを研究の柱として、子どもの成長や学ぶことの楽しさを味わえるような授業づくりに向けて研究を行っています。

2.卒業論文
 私の専門は文学の読みの交流なのですが、国語科は多くの領域から成り立っている事もあって、学生の卒論テーマも様々です。
 今年3月に卒業した2期生の卒論では、論理的思考力を重視したディベート活動の提案や、道徳教育との違いを明確にした心を育む国語科教育、国語科教育理論からみた方言教育、発話プロトコル分析による小学生の言語発達など、多岐にわたりました。また、1期生の細原真実子さんは、卒論を再編して学会発表し、多くの先生方からコメントをいただきました。
 国語の教師は、全ての領域について指導できなければなりません。ゼミ発表では、質疑応答の時間を設け必ず全員に何らかのコメントを求めています。鋭い指摘も飛び交いますが、概ね和気藹々とした雰囲気の中で各領域の研究に触れられるのは、教育現場でも大いに役立つものになると思います。

3.ゼミ合宿
 教師の専門家像を表す概念として、「反省的実践家」(ドナルド・ショーン)という言葉があります。教師という仕事は、実践・検証・改善といった試行錯誤の繰り返しで、非常に創造的なものです。実践と改善の繰り返しの中で、生徒が自信をつけていく姿が見られるのは、教師として大きな喜びであり、自信にも繋がります。その為にはやはり研鑽を積み、学び続ける教師であることが求められます。
 沖縄県に住んでいると、なかなか他県の研究会や勉強会に足を運ぶ機会がありません。そうすると、どうしても自分の授業実践の課題に向き合える場所が限られてしまい、井の中の蛙になってしまいます。
 ゼミでは、学生のうちに広い世界を見てほしいということで、学会への参加を計画しています。全国各地から、キャリーケース片手に勉強に来る先生方の姿を見るだけでも、大きな刺激になります。子供達のために、視野を広げ、学び続ける教師になってほしいと思います。

 高校生の皆さんの中にも、教師を目指している方が沢山いることでしょう。視野を広げるためにも、是非、新聞(ネットニュースではなく)を読み、自分の意見を持つようにしてください。

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【写真は今年の春に行ったゼミ旅行の様子です。県外の国語教育先進校への視察や文学作品の舞台をめぐります】