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日本文化学科のブログ

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【2022年度「卒業論文奨励賞授賞式」を開催しました!】

イベント
日本文化学科では、4年生による卒業論文の執筆が必修化されており、各専門領域の下で各自が興味関心のあるテーマや題材を決めて、1人あたり50枚から(長い場合は)200枚に及ぶ論文を執筆することになっています。そして、学科の「ディプロマポリシー」に即して、学術的に価値の高い論文、または将来の進路につながるような卒業研究を行ったを学生を表彰する「卒業論文奨励賞」の表彰を5年前から実施しています。

昨年はコロナ禍ということもあって、奨励賞の授賞式は延期に延期を重ねて、ようやく卒業式で開催することになりましたが、今年度は予定通り、2年生向けの必修科目「ゼミナール入門」にて、これからゼミに進んで卒論をスタートする後輩たちの前で表彰式を開催していました。

プレゼンターは、学科長の桃原先生、進行役は安志那先生が務めました。



2022年度の卒論奨励賞の受賞論文タイトルは以下の通りです。

●比較文化研究室
 中村さん「2010年から2020年における日本人の名付けの変遷―キラキラネームに着目して―」

●琉球語学研究室
 糸数さん「久高島方言の特徴について」

●文化情報学研究室
 伊波さん「メディアにおけるジェンダー・バイアスに関する一考察-『週刊少年ジャンプ』の女性キャラクターの変化に注目して―」
 與那嶺さん「書店の配本システムに関する考察-買い切り方式の是非をめぐって―」

●国語教育学研究室
 山田さん「文学教育におけるミステリー小説の可能性」

●日本文学・沖縄文学研究室
 上原さん「語られた物語とその歪み—谷崎潤一郎『春琴抄』論」
 根路銘さん「「女生徒」におけるジェンダー的読解 — 太宰治「女生徒」論」

●多文化間コミュニケーション研究室
 長堂さん「近年の日本における韓国文学の受容-エッセイ・詩集を中心に―」

授賞式では各論文の紹介を担当の先生方から行いました。
ここでは、文化情報学研究室の山口先生から受賞者お二人への講評をご紹介します。

與那嶺れいなさんの論文「書店の配本システムに関する考察ー買い切り方式の是非をめぐってー」は、今年度の、図書館情報学分野の中でもっとも優れた論文として選出しました。司書課程の皆さんは、1年生の時に授業でも学んだと思いますが、日本の書店は一般的に「再販売価格維持制度」を採用して、本の定価販売を行っています。しかし、最近のルール変更で、「買い切り方式」が採用されるようになってきています。いままでは、本の値段は売れる、売れないに関わらず、変えてはいけなかった、のに、いつの間にか、値引きができる、または値上げもできるようになっている現実があります。つまり、書店にも競争原理を導入したほうがよいという制度改革が進んでいるんですね。與那嶺さんの論文では、全ての書店がこのまま買い切り制になってしまうと、多様な文化との出会いや地域の課題を発信していくという役割が失われてしまうのではないか、そうした問題意識の下で行った調査が、丁寧な文献調査をもとに、的確な文章でまとめられています。
與那嶺さんの論文は、表面的には書店の研究ですが、市場原理・競争というキーワードは、図書館にも共通しています。書店と図書館、文化の発展のために一緒に頑張っていたはずの一方が、競争原理に巻きまれていくことのこわさのようなものを、論文を読んでとても強く感じました。
図書館を直接扱ったものではありませんが、司書課程の後輩たちにもぜひ読んでほしい論文として、奨励賞に選ばせてもらいました。

伊波夏帆さんの論文、「メディアにおけるジェンダー・バイアスに関する一考察-『週刊少年ジャンプ』の女性キャラクターの変化に注目してー」は、サブタイトルにもあるように、『週刊少年ジャンプ』の人気作品を1980年代までさかのぼって、「内面性」と「外見」にわけて、ジェンダーという観点から、ヒロイン像の変化を追いかけたものです。先週の「ゼミナール入門」でも紹介しましたが、日本文化学科では、自分の「好き」を卒業研究の題材にすることもできます。常々、卒業研究って面白いんだよ、ということを伝えたいなと思っているのですが、伊波さんの論文はまさにそのお手本のような論文で、提出された論文を読んで、伊波さんがこの題材に心から楽しんで取り組んでいる様子が伝わってきました。今日は内定先の研修で欠席ですが、伊波さんの卒業論文は早く皆さんに読んでほしい、ということで、学内で利用できる卒論データベースにいち早く掲載していますので、ぜひ読んでみて、3年生から始まる卒業研究へのわくわく感を高めてほしいなと思います。

以上が卒論奨励賞の講評ですが、2人の卒論への取り組みを見ていて感じたことは、自分が興味があること、好きなことを題材にしているだけあって、就活とかで大変な時期もいっぱいいっぱいあったと思いますが、いつも前向きに、楽しそうに取り組んでいるなぁということでした。
2年生のみなさんも、2年後、ここに立つぞ!という気もちをもってこれからも頑張ってください。



受賞された皆様、本当におめでとうございます!