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日本文化学科のブログ

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【1年生の夏休みの読書の友、『にちぶん羅針盤』(ブックガイド)が完成しました!】

1年生、頑張ってます!
日本文化学科の1年生全員が受講する必修科目「リテラシー入門Ⅰ・Ⅱ」では、1年間をかけて、「アカデミック・スキル」を身に着けるためのトレーニングを少人数クラスで実施しています。

その中心は読む・書く・話す・考えるといった、日本語運用のトレーニングで、前期は要約文の書き方やデータの読み取り方に基づく批評文の書き方、さらには、レポートの書き方などを習得します。

夏休みを目前に控えたこの時期には、毎年、1年生全員に「ブックガイド」が配布され、ガイドブックの使い方や、夏休みにぜひ図書館で借りて読んでほしい先生方の推薦書の紹介、さらに、書評の書き方についてのレクチャーを行っています。



このブックガイドのタイトルは『にちぶん羅針盤(こんぱす)』。



2025年号にも、言語学・文学・多文化・図書館・国語科教育・日本語教育などなど、専門分野の面白さを満喫できるような入門書、先生たちが大学時代に読んで感銘を受けた本、さらに各分野をさらに詳しく深堀した専門書など、約130タイトルの紹介文が掲載されています。
ブックガイドにはこのほかにも、先生たちによる読書や図書館利用についての、あるいは、大学1年生のころを振り返ってのエッセイなども収録されています。また、昨年度の図書館書評コンテストの優秀作や、2年生によるレポートコンテストの優秀作も掲載されていて、これからの1年生にとって、まさに「羅針盤」になるような盛りだくさんのコンテンツとなっています。

図書館学担当の山口先生は次のような図書館にまつわる映画エッセイを書いてくれました。

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「Love Letter」と間違い探し

 いまからかれこれ25年くらい前のことだけれど、私が大学教員として沖縄国際大学の図書館学担当教員として働き始めたころ、「図書館概論」という授業の中で、<映画を見る>という回を設けていた時期があった。90分の授業では映画1本は収まらないから、その回は19時ごろまで延長して、5号館の階段教室を映画館のように真っ暗にして、ポップコーンやハンバーガーを食べながらみんなでワイワイと映画を楽しもう、という回である。
 当時上映していたのは、1995年に公開されて大ヒットした、岩井俊二監督の「Love Letter」という作品。雪山で遭難した恋人を思い続ける20代前半の女性と、遭難した恋人と中学校時代に同級生だった女性との手紙のやりとりを綴ったラブストーリーである。なぜ図書館学の授業でこの映画を上映していたのかというと、主人公(の一人)が公共図書館で働いており、中学校時代の回想シーンなどで、学校図書館が重要な舞台として登場する作品だからである。着任した頃はとにかく授業の準備が毎回大変で、映画を学生に見せると1回分、準備をしなくてもよい…そんな下心もちょっとあったのかもしれない。
 授業でこの映画を上映した次の回で取り上げていたテーマは<図書館の自由>であった。
図書館で誰もが自由に読書ができるようにするためには、すべての利用者の、すべての読書をプライバシー(秘密)として保護しなければならない。しかしながら、この映画に出てくる図書館員たちはいたるところで読書の秘密を漏らしてしまう。受講生には映画を楽しんでもらいつつ、「図書館員の行動について何か問題を感じるところはなかったか?」と問いかけて、映画が終わった後にミニレポートを出してもらっていたのだが、問題点をズバリ指摘できた学生はほとんどいなかったように記憶している。

 長く教員生活を続けていると、同じ科目でも、教えたいことがどんどん増えて行くもので、いつの間にか授業の中で「Love Letter」を上映することはなくなってしまった。それと同時に、この映画の存在もすっかり忘れていたのだけれど、昨年末に、主人公を演じた俳優の中山美穂さんが54歳という若さで亡くなってしまったこともあって、ふと懐かしくなって、研究室の書棚の奥の方にあったビデオを引っ張り出してみてみることにした。
 当たり前だけれど、20年ぶりに見てもやっぱり映画の中の図書館員はいたるところで読書の秘密を漏らしてしまう。もちろん、そうしないとこの素敵なラブストーリーは完結しないし、あくまでもフィクションなのだから、そんなに目くじらを立てることはないのだろう。しかし、こういう映画が何の違和感なく世の中に受け入れられてしまうことは大きな問題なのではないかと、久しぶりに再見してみても、エンディングで号泣しながらも、やっぱり心のどこかで引っかかってしまった。

 映画「Love Letter」は沖縄国際大学図書館の3FにあるAVコーナーにも所蔵されている。大学生最初の夏休み。真冬の北海道を舞台にした映画を暑い暑い真夏の沖縄の図書館で観るのもまた一興だろう。ラブストーリーに感涙しつつ、映画の中の図書館員たちの間違い探しにもぜひ挑んでほしい。

Love letter / 岩井俊二監督・脚本 ; 村上光一製作
[東京] : フジテレビジョン (発売) , 1996
3階/AV資料室 778.21/I-93
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日本文化学科にはなんと(大学生なのに…)夏休みの宿題があって、1年生の課題は「書評の執筆」と、本学図書館書評コンテストへの応募です。
今年もたくさんのチャレンジを期待しています!