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日本文化学科のブログ

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【連載:研究室に行ってみよう① 図書館情報学・表現論研究室へようこそーー山口真也先生】

先生も頑張ってます
日本文化学科には専任教員12名ごとに研究室が設けられています。日文生は3年生になるとそれぞれの研究室に所属して卒業研究・卒業制作を進めていきます。各研究室ではどんな研究ができるでしょうか? ゼミ担当の先生に、受験生向けに語ってもらいましたのでご紹介します。
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◎沖縄は図書館先進地域?   
沖縄の図書館は他府県と比べて進んでいるでしょうか? 遅れているでしょうか? 多くの人は「遅れている」と答えると思いますが、実はそうでもないのです。確かに、公共図書館は沖縄戦の影響もあって歴史が短く、設置が遅れている自治体もあるのですが、その一方で、学校図書館については「先進地域」とも呼ばれています。他府県の小中学校では、「学校司書」と呼ばれる職員の配置率は五割程度ですが、沖縄ではほぼ100%の専任職員配置率となっています。司書がたくさんいるということは、卒業後、専門職として活躍できる場所がたくさんあるということです。僕の研究室では、学校図書館も含めて、プロの司書を各図書館に送り出すことができるようにいろんな研究を行っています。
図書館情報学の研究は、社会との関わりの中で様々なテーマを設定できるところに、その面白さがあると思います。例えば、最近、LGBTの権利拡大が求められていますが、この流れは図書館にも関わります。「T」にあたるトランスジェンダーの人たちが貸出カードを作るときに、性別情報を書かせてよいのか、カードの氏名記入を本名にすると困る利用者がいるのではないか、LGBT関連本を自由に借りられるように、プライバシーはきちんと守られているのか、自身のセクシュアリティに気付くのは中学生の頃が多いと言われていますが、図書館はきちんと中高生向けの棚にLGBTをテーマにした資料を置いているのか、恋愛小説をテーマとした展示を行うさ、男女の恋愛の本だけを扱っていることは差別につながるのではないか、といった問題意識をもって調査を行っている学生もいます。「子どもの貧困」や「障害者差別」「感情労働」などの社会問題も図書館と大きく関わります。学生の卒論を通して、いろいろな社会問題と向き合うことができるので、私自身も指導していてとても勉強になっています。 

◎アニメ・マンガを題材に「表現」を論じる 
僕の研究室ではこの他にも「表現の自由・言論の自由」というテーマで児童文化に関する研究も行なっています。みなさんも子どもの頃、アニメーションを楽しんで見ていたと思いますが、アニメと原作マンガとを比較すると、その内容がずいぶん変わっていることに気付かされます。例えば、藤子・F・不二雄先生の「ドラえもん」は、原作では錠剤(薬)の道具がたくさんでてきますが、アニメーションではすべて「コロン」「スプレー」などに変わっています。他にも、「自殺」という言葉がカットされたり、ジャイアン・スネ夫のいじめもソフトになっています。しずかちゃん、と言えばお風呂が大好きな少女のはずですが、最近のアニメでは入浴シーンがカットされたり、水着を着て入っていたりします。
暴力描写や差別表現の、書き換えは昔話や童話の絵本などにもよくみられます。「白雪姫と七人のこびと」というタイトルも今では、「こびと」が消えて「白雪姫」になっていたりするんですね。一定の規制はもちろん必要ですが、規制が強化されることによって、表現できる範囲がどんどん狭くなっているという問題も指摘されています。悪や暴力を全く知らない子どもが育つのもちょっと怖い気がします。ゼミでは、アニメと原作マンガを比較して表現の相違点を観察したり、その是非を論じたり、学校図書館や書店での取り扱いについて調べたりしています。

◎受験生のみなさんへのメッセージ 
 図書館の先生だから言うわけではありませんが、大学選びに迷ったらまずその大学の「図書館」を見てください。図書館は学生のための施設です。図書館にたくさん資料がある(=お金をかけている)大学は「学生サービス」を大切に考えている大学です。そして、館内で一所懸命頑張っている学生がどのくらいるか、を見ることでその大学の学生の「質」も分かります。沖縄国際大学図書館はこの2つの点で、受験生の皆さんに自信をもって紹介できる図書館です。ぜひ見学に来てください。

写真:「研究室にある本でいちばん好きな本をもってポーズしてください」とお願いしたら、大量の絵本といっしょにパチリ。「絵本を100冊読んでレビュー授業もあります。懐かしい絵本と再会して、小さい頃には気がつかなかった新しい発見に出会えるのも図書館学のおもしろさです」と山口先生。手にしているのは山口先生が一番好きな絵本『きんぎょがにげた』。