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日本文化学科のブログ

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【図書館学担当の山口先生の論考が掲載さた本が出版されました!】

先生も頑張ってます
日本文化学科で司書課程の授業を担当している山口先生の論考が掲載されている専門書が2023年5月末に出版されました。

タイトルは『塩見昇の学校図書館論 インタビューと論考』、山口先生もメンバーの一人として参加している日本図書館研究会の学校図書館史研究グループによる編著書として編まれたものです。

本書には、学校図書館について根源提起な問いを追求し、その充実のための労を惜しまない教育研究者・塩見昇氏への足かけ5年にわたるインタビュー記録がまとめられており、巻末には、塩見氏の学校図書館論の特徴をテーマごとに取り上げた、研究グループによる論考も掲載されています。

山口先生は「第2章 学校図書館活動論」の中の、学校図書館と図書館の自由との関わりをテーマとする「知的自由に裏打ちされた図書館活動と図書館教育」と「知的自由に裏打ちされた学校図書館のはたらきをどのように実現するか?」という部分を執筆しています。(pp.455-471)



公共図書館と違って、学校図書館では、「教育的配慮」や「信頼関係」の名の下で、図書館の自由の実践が難しいということがよく指摘されています。
例えば、子どもに悪影響を与えるような、いわゆる「悪書」と呼ばれるような資料へのリクエストがあった場合、学校図書館(学校司書)はどう対応するべきなのか、あるいは、クラス担任等が読書指導や生活指導を目的として、学校図書館が管理している貸出記録を提供してほしい、と要望してきた場合、学校司書はどう対応するべきなのか、といった問題は、学校図書館をめぐる図書館の自由にかかわる問題として古くから議論されてきました。

本書では、塩見氏へのインタビューをもとに、塩見氏がこれまで発表してきた論文なども参考にしながら、「検閲より選択を」、「制限よりも教育を」という視点から、学校図書館もまた図書館の一つであり、図書館の自由の実践は公共図書館と同様に、あるいは、利用者への直接的な働きかけができる学校図書館だからこそ実現できる、という塩見氏の特徴的な考えを照射していきます。

学校図書館と図書館の自由との関わりについては、山口先生が担当した論考以外にも、インタビュー集の第7章として約70ページにわたって論じられており、「図書館の自由に関する宣言」が1979年に改訂された際の学校図書館の位置づけについての議論の経緯や、最近の『はだしのゲン』閲覧制限問題、1990年代の『完全自殺マニュアル』をめぐる問題なども取り上げられています。
他にも、学校図書館の教育力、学校図書館の職員論について、また市民による学校図書館づくり運動などのテーマでの論考やインタビューも充実しています。

「学校図書館への人の配置が他府県より進んでいる沖縄県だからこそ直面する難しい問題へのヒントもたくさんまとめられています。学校司書を目指す学生たち・受験生のみなさん、そして、「図書館の自由」に関心のある方々にも読んでほしい一冊です」と山口先生。
お近くの図書館等、書店等でぜひお求めください。