【認知症×読書・図書館 産学連携プロジェクト---学生による報告会を開催しました!】
図書館司書課程通信
超高齢社会である日本では、65歳以上の4人に1人が認知症やその予備軍と言われています。ここ数年は特にコロナ禍での外出や交流の制限などもあり、コミュニケーション機会の減少によって認知症患者が増加することも懸念されています。そして、様々な人が集う街の図書館にとってもこうした課題は無関係ではありません。
県内唯一の図書館専門職養成機関である沖縄国際大学総合文化学部日本文化学科では、超高齢社会における図書館の役割を考えるプロジェクトを立ち上げ、社会福祉法人ばなな会(代表:矢野達郎・神奈川県川崎市)と連携しながら、「回想法」をキーワードとして、「認知症の方々にやさしい文庫づくり」という取り組みを進めてきました。
「回想法」とは、認知症患者への非薬物療法のひとつであり、リハビリテーションとして介護現場で多く用いられています。回想法に使われるものとしては、古い道具類や家族アルバムなどが挙げられますが、図書館が所蔵している資料(昔懐かしい街並みやスターの写真集やDVD、音楽CD)なども、記憶の底に眠っていた過去の楽しい思い出を鮮やかによみがえらせ、脳が刺激され、認知症の進行を緩やかにする効果があるのではないかと考えられます。
2023年11月27日、神奈川県川崎市にあるのんびりーす等々力という高齢者施設を訪問して「文庫」づくりを行い、2024年1月25日に、沖縄国際大学図書館4Fのラーニングコモンズにて、その活動報告会を開催しました。
この報告会では、本学において図書館情報学を専攻した後、介護福祉士として社会福祉法人ばなな会にて働かれている仲田ひな子さんと学生たちが協力しながら取り組んだ、4カ月間のプロジェクトの成果発表を行いました。
具体的には、学生たちを3グループにわけて、11月27日に神奈川県川崎市にあるのびりーす等々力での文庫づくりの実習の様子や、選書した資料の紹介、施設スタッフの皆様へのアンケートをもとに、文庫の使いやすさ・親しみやすさや、文庫設置による認知症の進行抑制効果について分析した結果を報告させていただきました。
プロジェクトのメインの目的であった、認知症の進行抑制効果については、11月末~1月中旬の短い期間でははっきりと読み取ることが難しい、という結果になりましたが、前向きな様子や笑顔が増えた、といった、認知症の進行抑制につながるような行動面、心理面での変化が入居者の方々にみられる、という回答がスタッフの皆様から非常に多く寄せられ、長期間、この文庫を設置することで、認知症の進行抑制という効果も高まってくるのではないか、と学生たちがまとめてくれました。
この報告会は、沖縄国際大学図書館のイベントの一つとしても開催され、授業を受けている学生だけでなく、県内の図書館関係者や日頃司書課程の授業で教わっている先生方にも多数来ていただきました。報告後の意見交換会では、「若い皆さんが80代、90代の入居者向けの本を選ぶのは難しかったと思うが、男はつらいよのDVDや、東京オリンピックのDVD、石原裕次郎さんの写真などを集めるというアイディアはどのように得たのですか?」「個人的にボランティアとして施設で読み聞かせをする活動を行っているので、沖縄でも図書館からのアプローチも今後増えてほしい」といった質問や意見が寄せられました。
意見交換会の後は、施設を代表して、神奈川県から駆けつけてくださった、介護福祉士の仲田ひな子さんによる特別報告もありました。
仲田さんからは、アンケート結果からは読み取れない、日々の利用の様子について、「アンケートによる検証が終わったら、文庫は返さないといけないの?」という心配があるほど、このコーナーが愛されていること、特に積み木が大人気で、どのくらい高く詰めるか、入居者の方同士が競ったり、協力し合ったりする様子が見られたこと、などを教えていただきました。
入居者が資料を利用されている様子もたくさんの写真でご紹介くださり、自分たちが選んだ本やおもちゃ類が実際に使われている様子をみて、学生たちもとても達成感があったようです。
また、アンケートを分析した学生からは、「「男はつらいよ」の第1作のDVDが人気があったようなので、第2作、第3作をプレゼントしようかと話し合ったが、認知症の方にとって、そもそも資料の更新は必要なのか?、一度見た映画のことをどのくらい覚えていられるのか?」ということがメンバーの中で話題になった、という意見もありました。仲田さんからは、「認知症の方の症状にも多様性があり、一度見たもの、読んだものを忘れてしまう、というのは間違いです。また、小さな子どもはまだ絵本の内容が分からないからと言って、毎日、同じ絵本を読むお母さんはいないのと同じように、人として接する上で、同じものを与え続けていてよい、ということにはならないと思います。認知症の方の人権に関することととしても、読書や図書館サービスのあり方を捉えてほしいです」というメッセージもいただきました。
報告会の最後には、受講生を代表して4年生2名が仲田さんにお礼の言葉を述べました。
「コロナ禍で、入学当初から大学の外に出て活動をすることが制限されていた世代だったので、今回の体験はとても貴重でした。心が弾むような学びの機会を与えてくださり、サポートしてくださった仲田さん、松枝さん、施設のスタッフの皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。超高齢社会の中での、これから司書になっていく私たちにとって、認知症の方々へどのようなサービスを行うか、ということは大きな課題になってくると思います。これからの司書の役割を実践的に学べました」と学生たち。
沖縄国際大学司書課程では、大学で学んだ知識を地域社会に役立てるための取り組みを今後も続けていきたいと思っています。
学生たちと何か取り組んでみたい、といったオファーがありましたら、ぜひ担当者(山口)までご連絡ください。
県内唯一の図書館専門職養成機関である沖縄国際大学総合文化学部日本文化学科では、超高齢社会における図書館の役割を考えるプロジェクトを立ち上げ、社会福祉法人ばなな会(代表:矢野達郎・神奈川県川崎市)と連携しながら、「回想法」をキーワードとして、「認知症の方々にやさしい文庫づくり」という取り組みを進めてきました。
「回想法」とは、認知症患者への非薬物療法のひとつであり、リハビリテーションとして介護現場で多く用いられています。回想法に使われるものとしては、古い道具類や家族アルバムなどが挙げられますが、図書館が所蔵している資料(昔懐かしい街並みやスターの写真集やDVD、音楽CD)なども、記憶の底に眠っていた過去の楽しい思い出を鮮やかによみがえらせ、脳が刺激され、認知症の進行を緩やかにする効果があるのではないかと考えられます。
2023年11月27日、神奈川県川崎市にあるのんびりーす等々力という高齢者施設を訪問して「文庫」づくりを行い、2024年1月25日に、沖縄国際大学図書館4Fのラーニングコモンズにて、その活動報告会を開催しました。
この報告会では、本学において図書館情報学を専攻した後、介護福祉士として社会福祉法人ばなな会にて働かれている仲田ひな子さんと学生たちが協力しながら取り組んだ、4カ月間のプロジェクトの成果発表を行いました。
具体的には、学生たちを3グループにわけて、11月27日に神奈川県川崎市にあるのびりーす等々力での文庫づくりの実習の様子や、選書した資料の紹介、施設スタッフの皆様へのアンケートをもとに、文庫の使いやすさ・親しみやすさや、文庫設置による認知症の進行抑制効果について分析した結果を報告させていただきました。
プロジェクトのメインの目的であった、認知症の進行抑制効果については、11月末~1月中旬の短い期間でははっきりと読み取ることが難しい、という結果になりましたが、前向きな様子や笑顔が増えた、といった、認知症の進行抑制につながるような行動面、心理面での変化が入居者の方々にみられる、という回答がスタッフの皆様から非常に多く寄せられ、長期間、この文庫を設置することで、認知症の進行抑制という効果も高まってくるのではないか、と学生たちがまとめてくれました。
この報告会は、沖縄国際大学図書館のイベントの一つとしても開催され、授業を受けている学生だけでなく、県内の図書館関係者や日頃司書課程の授業で教わっている先生方にも多数来ていただきました。報告後の意見交換会では、「若い皆さんが80代、90代の入居者向けの本を選ぶのは難しかったと思うが、男はつらいよのDVDや、東京オリンピックのDVD、石原裕次郎さんの写真などを集めるというアイディアはどのように得たのですか?」「個人的にボランティアとして施設で読み聞かせをする活動を行っているので、沖縄でも図書館からのアプローチも今後増えてほしい」といった質問や意見が寄せられました。
意見交換会の後は、施設を代表して、神奈川県から駆けつけてくださった、介護福祉士の仲田ひな子さんによる特別報告もありました。
仲田さんからは、アンケート結果からは読み取れない、日々の利用の様子について、「アンケートによる検証が終わったら、文庫は返さないといけないの?」という心配があるほど、このコーナーが愛されていること、特に積み木が大人気で、どのくらい高く詰めるか、入居者の方同士が競ったり、協力し合ったりする様子が見られたこと、などを教えていただきました。
入居者が資料を利用されている様子もたくさんの写真でご紹介くださり、自分たちが選んだ本やおもちゃ類が実際に使われている様子をみて、学生たちもとても達成感があったようです。
また、アンケートを分析した学生からは、「「男はつらいよ」の第1作のDVDが人気があったようなので、第2作、第3作をプレゼントしようかと話し合ったが、認知症の方にとって、そもそも資料の更新は必要なのか?、一度見た映画のことをどのくらい覚えていられるのか?」ということがメンバーの中で話題になった、という意見もありました。仲田さんからは、「認知症の方の症状にも多様性があり、一度見たもの、読んだものを忘れてしまう、というのは間違いです。また、小さな子どもはまだ絵本の内容が分からないからと言って、毎日、同じ絵本を読むお母さんはいないのと同じように、人として接する上で、同じものを与え続けていてよい、ということにはならないと思います。認知症の方の人権に関することととしても、読書や図書館サービスのあり方を捉えてほしいです」というメッセージもいただきました。
報告会の最後には、受講生を代表して4年生2名が仲田さんにお礼の言葉を述べました。
「コロナ禍で、入学当初から大学の外に出て活動をすることが制限されていた世代だったので、今回の体験はとても貴重でした。心が弾むような学びの機会を与えてくださり、サポートしてくださった仲田さん、松枝さん、施設のスタッフの皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。超高齢社会の中での、これから司書になっていく私たちにとって、認知症の方々へどのようなサービスを行うか、ということは大きな課題になってくると思います。これからの司書の役割を実践的に学べました」と学生たち。
沖縄国際大学司書課程では、大学で学んだ知識を地域社会に役立てるための取り組みを今後も続けていきたいと思っています。
学生たちと何か取り組んでみたい、といったオファーがありましたら、ぜひ担当者(山口)までご連絡ください。