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日本文化学科のブログ

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【1年生向けの夏休みブックガイド『にちぶん羅針盤(こんぱす)』が今年も堂々完成しました!】

1年生、頑張ってます!
日本文化学科の1年生全員が受講する必修科目「リテラシー入門Ⅰ・Ⅱ」では、1年間をかけて、「アカデミック・スキル」を身に着けるためのトレーニングを少人数クラスで実施しています。

その中心は読む・書く・話す・考えるといった、日本語運用のトレーニングで、前期は要約文の書き方やデータの読み取り方に基づく批評文の書き方、さらには、レポートの書き方などを習得します。

夏休みを目前に控えたこの時期には、毎年、1年生全員に「ブックガイド」が配布され、ガイドブックの使い方や、夏休みにぜひ図書館で借りて読んでほしい先生方の推薦書の紹介、さらに、書評の書き方についてのレクチャーを行っています。





このブックガイドのタイトルは『にちぶん羅針盤(こんぱす)』。
2024年号にも、言語学・文学・多文化・図書館・国語科教育・日本語教育などなど、専門分野の面白さを満喫できるような、各先生による入門書の紹介文をはじめとして、先生たちによる読書や図書館利用についての、あるいは、大学1年生のころを振り返ってのエッセイなども収録されています。また、ブックガイドの後半には、昨年度の図書館書評コンテストの優秀作や、2年生によるレポートコンテストの優秀作も掲載されていて、これからの1年生にとって、まさに「羅針盤」になるような盛りだくさんのコンテンツとなっています。

図書館学担当の山口先生は次のような図書館利用についてのエッセイを書いてくれました。

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「フィルターバブルと図書館と大学生活」

 4月1日の入学式後の新入生オリエンテーションで、自己紹介として次のようなことを話した。

 「図書館司書資格の授業を担当する山口真也です。私が教えている図書館という場所は、売れ筋のベストセラー本が大量に並んでいる書店とは違って、売れる本も売れない本も、1冊1冊、さまざまな顔をした本と出会える素敵な場所です。
大学というところも本当はそういう場所だと思います。みなさんのことを「新入生」「1年生」とひとくくりにせずに、一人ひとりとの出会いを大切にしたいと思っています。4年間、いっしょに頑張りましょう。ご入学おめでとうございます。」

 なかなか上手な挨拶だったなぁと自画自賛しつつ、「図書館は素敵な場所です」というところで、実はもうすこし皆さんに伝えたいことがあった。
 学生のみなさんが知りたいこと・調べたいことがあるときに、真っ先に頼るものはインターネットだろう。Googleなどの検索エンジンを使えば情報はすぐに得られるし、生成AIを使えば、疑問だけでなく、悩み事にも瞬時にこたえてくれる。そんなデジタルネイティブの学生の皆さんに、「インターネットの情報は間違いが多い」「図書館できちんと本を調べよう」と言っても、なかなか素直に足が向くものではないだろう。正しくない情報が含まれているとしても、24時間好きな時に使える、そんな便利さに人が押し流れていくのもわからないわけではない。

 ただし、図書館は信頼できる情報が得られる場所であると同時に、公正な立場から様々な情報にアクセスできる場所でもある。
 「フィルターバブル」という言葉をご存じだろうか。総務省によると、「アルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析し学習することで、個々のユーザーにとっては望むと望まざるとにかかわらず見たい情報が優先的に表示され、利用者の観点に合わない情報からは隔離され、自身の考え方や価値観の「バブル(泡)」の中に孤立するという情報環境を指す」と説明されている。

 例えば、インターネットで差別的な情報を毎日好んで見ていると、GoogleのニュースやSNSに流れてくる情報が差別的なもの一色になってしまう、という現象である。世の中には多様な意見があることは、その人のスマホの中の世界線には全く反映されなくなってしまう。ちなみに私がGoogleのニュースを開くと、80年代のアイドルの記事ばかりが出てきて、この世の中には差別も貧困も戦争も汚職も犯罪も何もないような平和な世界線である。

 こんなフィルターバブルに溺れないために、図書館はきっとあるのだろう。図書館の棚には、公正な立場から選ばれた様々な資料が、人類の知恵を結集した分類法によって並べられている。ウクライナ戦争、台湾有事、エネルギー問題など、正反対のことが書かれた本が隣り合って仲良く並んでいたりする。棚の前に立つだけで皆さんの世界線はどんどん広がっていくだろう。
 図書館はさまざまな顔をした本と出会える素敵な場所である。図書館での1冊1冊との出会いを大切に4年間を過ごしてほしい。(2024.4.10)
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日本文化学科にはなんと(大学生なのに…)夏休みの宿題があって、1年生の課題は「書評の執筆」と、本学図書館書評コンテストへの応募です。
今年もたくさんのチャレンジを期待しています!