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日本文化学科のブログ

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【オープンキャンパス体験講座特別リポート‼ 日本語教師ってどんな仕事なの?】

多文化間コミュニケーションコースの取り組み
6月30日、7月14日に開催された夏のオープンキャンパスでは、日本文化学科のカリキュラムの中心となっている「言語学」や「文学」、さらにその学びを活かす専門職として「国語教師」や「図書館司書」をテーマとする体験講座をお届けしましたが、日本文化学科にはもうひとつ大切な学問領域として、「多文化間コミュニケーションコース」と、コースにかかわる専門職として「日本語教師」という職業について学ぶ資格課程も設置されています。

体験講座の枠数が決まっているため、夏のオープンキャンパスではこうした分野、職業に関する講座は開けなかったのですが、多文化間コミュニケーションや日本語教育に関心をもって総合型選抜試験にエントリーしてくれる方も多いと思いますので、そうした方々へに向けて、昨年夏に開催されたオープンキャンパスより、奥山貴之先生の体験講座の特別リポートをお届けしたいと思います。

体験講座のタイトルは「日本語教師のもつ力」。
講座はまず、「食事に招待したら、喜んで「行きます」と言ったのに、断りなく欠席する。その後謝ることもない。こんな人がいたら、あなたはどう思いますか。どうしますか?」という、奥山先生からの会場への質問からスタートしました。



会場にいる受験生からは「怒る」「友達をやめる」「怒らないけどもやもやする」といった回答がありましたが、実は、この人物にとっては、こうした行動は決して非常識なことではなく、当たり前のことのようです。では、どのような理由・背景があれば、「行くと言ったのに行かないことが常識」となるのでしょうか。

いくつか理由は考えられますが、この人にとっては、「行くと言って行かない」よりも、「誘いを受けて断る」ことの方が失礼にあたるという感覚があります。会場にいる多くの受験生の皆さんには理解しがたいことかもしれませんが、実はこういう「常識」を持つ国というのは世界にたくさんあるのです。

このように、相手の言動に「?」がついた時、自分の「常識」とは違った時に、「どうしてだろう」「何か背景がある」と考える姿勢はとても重要です。
「自分にとってのあたりまえ」は他の人にとってのあたりまえではないことは、私たちの日常生活の中でも時々あるのではないでしょうか。コミュニケーションの相手が自分とは国が異なる、母文化が異なればより一層そうしたことは起こりやすくなります。



日本語教師という職業は、日本に住む、または海外で生活する外国人に日本語を教える仕事ですが、その大前提として、自分とは異なる国の、異なる文化を持つ人たちコミュニケーションをとっていく必要があります。その中では、お互いに違いがあることを体験する機会がたくさんあります。そして、個々の違いを知識として理解するだけではなく、そうした違いに対応できる柔軟な力が求められます。こうした力を「異文化コミュニケーション能力」と呼んでいます。



体験講座の後半では、「この人の文章は論理展開が独特で、(読みがたい / 読みにくい)」という文例を挙げて、どちらが適切か、そして、どうしてそれが適切なのか説明してください、という問題が奥山先生から再び出題されました。

会場からは、「よみにくいが適切かな?」という声が多く上がったものの、なぜ適切なのか、という奥山先生からの問いかけに対しては手は上がりませんでした。

奥山先生によると、日本語学的にとらえると、「がたい」は、「~しようと思っても簡単にはできない」ことを強調する場合に使用され、「にくい」は「しようと思えばできる・努力をしたらできるが、難しい。物理的に(能力的・技術的に)難しい」場合に使用される、という区別ができるそうです。

日本語教師になると、外国人からはこうしたちょっとした日本語の使い分けに対する質問がたくさん寄せられるようになります。日本語教師はまさに日本語のエキスパートであり、日本語という母語・母文化と真剣に向き合い、専門的に学ぶことが求められます。そして、文化が異なる相手にその専門的な知識をどうすればわかりやすく伝わえられるか、どうすれば学習者が日本語を身に付けることができるかを考え続けることも重要です。
これが日本語教師に求められる第二の力、「自らの言語・文化への理解と、それを伝える力」となります。



実は今回の体験講座には「日本語教師のもつ力」というタイトルの他に、「多文化社会をよりよく生きる」というサブタイトルもついていました。
ここで紹介した日本語教師に求められる力は、多文化化が進む沖縄の社会の中でも、多様な背景を持つ人たちと豊かな関係をもつために必要な力と言えるでしょう。

日本文化学科に設置されている「多文化間コミュニケーションコース」は、日本語教育学や比較文化学をベースとしつつ、多文化社会をよりよく生きるための力を身に着けることができるコースです。日本語教師を目指す学生はもちろん、国内外への留学を計画している学生、県外・海外も視野に入れてビジネスシーンで活躍したいと思っている学生も多く在籍しています。



異文化理解力、そして、多文化を尊重するための学びは、受験生の皆さんのこれからの人生に必ず役立つ学問です。
興味を持った方はぜひ日本文化学科で一緒に学びましょう!