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日本文化学科のブログ

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【我部大和先生がシマ研究会の講師を務めました。テーマは「漢訳からみえる冠船芸能」】

琉球文化コースの取り組み
2024年7月23日、沖縄国際大学に設置されている「南島文化研究所」が開催する第226回シマ研究会にて、日本文化学科で琉球文化コースの授業や卒論指導を担当されている我部大和先生が講師を務めました。

研究会の題目は「漢訳からみえる冠船芸能 -老人老女・組踊を中心に-」。
「冠船芸能」とは、琉球側が中国から来琉した冊封使に対しオモロや端踊・組踊を上演し歓待した芸能を意味します。冠船芸能で上演された演目は、琉球語によるものであったため、琉球側は冊封使に「演戯故事」という漢訳した解説書を作成し、冊封使に呈上していたそうです。



我部先生によるとこの解説書に記載されている「老人老女」の内容は、中国を歓待するために、琉球が中国から遠く離れて、狭い国であること、つまり小国であることを強調するような変化がみられるそうです。

こうした変化は、冠船芸能として上演された組踊の解説の中にもみらます。
例えば、「執心鐘入」の若松は、もともとの話では、天才型の人物として演じられていますが、冠船芸能の中では努力をして学問を成した人物として描かれています。これは、中国の儒教思想の影響と考えられ、「中国から受け継いだ儒教思想が琉球でも大事にされています」ということをアピールしたかった、とも考えられます。

我部先生からの報告の後、コメンテーターの田場先生からは「まだ手が付けられていない分野の貴重な研究、琉中の関係がよく見えてくる研究であると同時に、漢訳を解説書ととらえてよいのか、芸能の身体表現を補完する役割も検討してみてはどうか」というコメントもありました。



この日の研究会はオンラインと対面のハイブリッドで開催され、30名を超える参加がありました。
質疑応答・意見交換の時間にも活発な議論がなされ、会場で参加した日本文化学科の西岡先生からは「漢訳される際に訳されいない部分に何か共通点はないのか?」、劉先生先生からは「解説書を書くのは一人なのか、複数人で担当するのか、書き手によって個性がみられるということはないか?」といった質問も寄せられました。





この日のレポートは後日、本学の南島文化研究所のホームページでも紹介されるとのことですので、ぜひご覧ください。