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日本文化学科のブログ

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【おもしろゼミナール入門② 西原町棚原の方言(アクセント)調査ー音声学的実証を通して】

研究室・ゼミナール紹介
日本文化学科は「卒論」が熱い! ということで、2017年度の卒業論文を紹介するコーナーの第2回。今回は、2018年3月に卒業した、西岡敏先生研究室(琉球語フィールドワーク研究室)の城間裕介さんにゼミでの研究活動について紹介してもらいました。西岡敏先生の研究室は琉球文化コースの学生が多く所属しています。琉球文化コースでどのような研究ができるか、イメージしてみてくださいね。
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 琉球語フィールドワーク学研究室では、夏休みを利用して、離島や北部地区への方言調査旅行に出かけています。卒業研究のための調査のトレーニングをすることが大きな目的で、2017年8月には伊是名島に行ってきました。

 私たちの学年は、方言調査は今回が初めての体験でしたので難しいところもたくさんありました。例えば、島に生息するいろいろな植物について名前を確認しないといけなかったのですが、島のみなさんが「草」と話されていたので、島の中では植物の呼び方はあまり区別しないのかな?、と思ってレポートをまとめていたら、聞き取りの方法が十分ではないからではないか、仮説は面白いけど、その仮説の面白さに引きずられてしまって、検証が不十分という指摘を先生からいただいたりしました。
 伊是名島の言葉の特徴はいろいろなところで感じましたが、例えば、「なっている」の形が、沖縄中南部でよく聞かれる「ナートン」ではなく、「ナヨーン」という全く別の形で話されている点もとても興味深かったです。

 卒業研究では、ゼミの同級生である新垣さんや東恩納さんにも手伝ってもらいながら、出身地でもある西原町棚原の方言調査をチームで行いました。西原町という地区の言葉は首里方言と大きな違いはないと言われているのですが、棚原だけはアクセントに違いがある、ということを指摘した先行研究が発表されています。しかし、私が生活してきた中ではそうした相違点を感じることはありませんでした。そこで、80歳以上の話者の方に日常生活でよく使う語を200ほど話してもらって、首里方言とのアクセントの違いがあるかどうか、を音声学的に実証する研究を行いました。
 結論としては、棚原地区と首里方言との間には大きな違いはない、ということになりましたが、それがもともとの特徴なのか、ここ数年の変化なのか、最近の変化とすると原因は何か、については十分な検証ができなかったので、今後も考え続けていきたいと思っています。

 卒論の方言調査では、年配の話者の方に「この言葉はこの地区ではどう言いますか?」と質問しても、なかなか回答が返ってこないことがたびたびありました。普段は標準語を使っているため、突然質問されても記憶がなかなか蘇らないようです。私たちのゼミでは方言を調査するだけでなく、継承することもテーマとして様々な活動をしています。「待ったなし」という意識をもって、これからも継承活動にも力を入れていきたいです。