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日本文化学科のブログ

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【連載:研究室に行ってみよう⑦ 大学で古典文学を学ぶ楽しさ―田場裕規先生インタビュー】

研究室・ゼミナール紹介
日本文化学科には12人の専任教員が在籍しています。田場裕規先生は教職課程で国語の先生を養成しつつ、古典文学のゼミも担当しています。
「ゼミ」というのは「ゼミナール」の略で、日本文化学科では、3年生になってから卒業論文を書くために所属する研究室のことです。
田場先生の研究室を訪問して、古典文学を学ぶ楽しさ、ゼミの様子などのお話を聞いてきました。
受験生のみなさん、大学・学科選びの参考にしてくださいね。


ーーー(コンコン) 田場先生、こんにちは。わぁ、先生の研究室は本がいっぱいですね。しかも難しそうな本がいっぱい・・・。どんな本が多いんですか?

田場先生: 私の研究室の書棚は、主に4つの分野(古典文学、国語教育、思想哲学、沖縄関係)の本が並んでいます。古典文学では、特に万葉集関係の本がかなり多いですね。まあ、『万葉集』は私の専門分野ですからね。
 『万葉集』は今から1300年前につくられたもので、日本最古の歌集です。古典と言えば、“ふるくさい”“難しい”言う人もありますが、私自身、『万葉集』は「日本で一番古くて、一番新しいもの」だと思っています。
 古典は何のためにあるのか、なぜ学ばなければならないのかということも研究テーマの1つですが、古くて新しいというところが『万葉集』の魅力かなあ。

ーーー古典の研究をされているだけあって、古い本も多いですね。ちょっと変な質問ですが、この中で一番高い本ってどれですか?

田場先生: そうですね。高い本といえば・・・これかな?
『類聚名義抄(るいじゅみょうぎしょう)』っていう古い辞書なんですが、なかなかの値段なんですよ。それと、これ。『国歌大観(こっかたいかん)』といって、和歌を集めたものなんです。最近DVD版が販売されて、少し前に手に入れました。お値段は「なかなか」どころの話じゃない値段(高い!)と言っておきましょう。
 値段で価値を計るわけではありませんが、なぜこんなに高いのかと考えてみると、それほどに大切なものだと言えるからではないのかな。例えば『類聚名義抄』で「胃」という漢字を調べてみると、読む方として「クソブクロ」と書かれてあります。今の漢字表記に変えてみると「糞袋」ですね。
 ちょっとびっくりしちゃいますが、当時の人が「胃」と「クソブクロ」と認識していたということがうかがい知る事ができますね。もちろん胃袋に入っているものは糞ではないのですが、いずれ排泄されるものという認識がすでにあったということができますよね。古典は今と昔の認識をつなぐ働きをするものであり、それを現代の思考に役立てるということが魅力でしょうか。

ーーー田場先生の研究室は古典文学をテーマに研究しているそうですが、具体的にはどんな研究をしているんですか?

田場先生: ゼミでとりあげるテーマは毎年変わりますが、最近だと、近世沖縄の文書『浮縄雅文集』を研究しました。変体仮名で書かれたものを少しずつゼミの皆で活字にしていく作業にゼミ生といっしょに取り組みました。変体仮名を読むことは、難しそうに見えるのですが、この手のモノは、「慣れ」ですから、あっと言う間に読めるようになりますよ。
 ゼミ3年次になると、関西地方を中心に古典で扱われた土地を巡る「研修旅行」を行いますが、変体仮名で書かれた石碑を学生がスラスラ読んだりしています。
 卒業論文は、古典文学と国語科教育をテーマにする学生が多いです。卒論の締め切りは12月末なのですが、締め切り前になると、毎年、学内の宿泊施設(厚生会館)に泊まり込んで缶詰になるのがゼミの恒例行事になっています。
 古典文学は高校生のみなさんにはちょっととっつきにくいところもあるかもしれませんが、高校までの国語の授業では習わなかったような面白い作品もたくさんあります。
 古典作品に親しみ、古典に学ぶ、そんなゼミを目指していきたいですね。

※写真は今年の春のゼミ旅行のもの。田場先生のゼミでは毎年、奈良や京都などの古典文学の舞台になった場所への研修旅行を行っています。