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日本文化学科のブログ

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【古典文学と国語教育の専門ゼミ(田場裕規先生のゼミ)が兵庫・岡山・香川に研修旅行に行きました】

研究室・ゼミナール紹介
 田場ゼミ研修旅行(3月11日~14日)では、万葉集の故地である、兵庫県、岡山県、香川県に行ってきました。初日、難波津(大阪湾:古代から交通の要衝)の眺望を確認するために、六甲山にある「掬星台」に行きました。何度も蛇行する山道を登りきると、神戸の夜景はもちろんのこと、大阪の夜景が飛び込んできました。星を掬(すく)う台「掬星台」とはよく言ったものです。夜景の光が、海岸線を明確にし、難波津の広さや大きさを実感することができました。



 天平勝宝7年、主に関東地方から防人が集められ、この難波津から筑紫の国に兵役として派遣されました。万葉集巻20には、その防人たちの歌が並んでします。
〇水鳥の立ちの急ぎに父母に物言はず来にて今ぞく悔しく(水鳥が飛び立つような勢いの早さで(徴兵されて)旅立ってきたので、父母に別れの言葉も言うことができなかった。そのことが悔やまれる)
〇時々に花は咲けども何すれそ母とふ花は咲き出来ずけむ(その季節ごとに花は咲くけれど、どうして母という名の花は咲き出てこなかったのだろうか。せめて母が花だったらともに連れ立っていけるのに、花ではないので、一人きりでいくしかない)






 煌々と輝く夜景の陰に、防人として九州に派遣された人々の悲痛な声が聞こえてくるようでした。その後、古代においても交易の拠点であった神戸港を散策しました。阪神淡路大震災の時、壊滅的な被害を受けた神戸の状況を伝える、神戸港岸壁の遺構を見学し投宿。

 2日目は、歴史の舞台として名高い、姫路城を見学し、瀬戸内海が一望できる温泉ホテルに一泊しました。海岸に面したホテルは、瀬戸内の島々が一望でき、古典文学にも確認される島名や地名も手に取るように分かりました。

 翌日、岡山県宇野港から香川県直島へ。瀬戸内海の島々を船に乗って確認し、昔の船旅について考えました。この船旅は、崇徳上皇も経験した船旅であったことを思うと、とても感慨深いものがありました。崇徳上皇は、香川に流される前に直島に立ち寄ったと言います。心の直き人々(心が正直な人々)の住む島ということで直島というそうです。島の中央には崇徳上皇を祀る神社があり、うっそうとした木々の中に、その御霊は眠っていました。直島はアートの島としても有名です。ベネッセミュージアム、地中美術館等にも足を運び、ジェームズタレル、モネなど、世界的なアーティストの作品にも触れました。

 研修旅行は、毎年行っている田場ゼミの恒例行事。友情を深める旅でもあります。文学故地から学ぶことは、その土地を介して自分自身の中に文学の感覚を見出すことでもあります。そして、その感覚を友人と共有することは、人生の宝物になるはずです。