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日本文化学科のブログ

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【連載:研究室に行ってみよう⑤ 神話研究とファンタジーの世界ーー葛綿正一先生インタビュー】

研究室・ゼミナール紹介
日本文化学科に所属する12人の専任教員をリレー形式で紹介していく連載の第6回目。今回は葛綿(くずわた)正一先生の登場です。

葛綿先生のゼミでの研究テーマも幅広く、神話研究、古典文学研究、古典文化研究・サブカルチャー研究などなど、多様なテーマで卒論に取り組む学生が多く所属する人気ゼミの1つです。
ゼミの特徴を一言で語るのは難しいのですが、ゼミ生たちが取り組んでいる卒論のテーマを葛綿先生にいくつかご紹介いただきました。
古典文学、サブカルチャーを学びたい人はAO入試や推薦入試の参考にしてみてくださいね。


◎神話研究ーー『古事記』の豊かな宇宙・ファンタジー世界
 『古事記』とは、714年に成立したとされる神話と歴史の書物です。イザナキとイザナミによる国生み、火の神を出産したイザナミの死、イザナキの冥界訪問、亡き母を慕うスサノオの乱暴とアマテラスの岩戸籠もり、天上世界から追放されたスサノオのオロチ退治と結婚、大国主の試練・国作り・国譲りなどが描かれていて、たいへんダイナミックな物語になっています。  
 『古事記』の研究では、例えば、神々の誕生と性格、その展開について調べる、というテーマがあります。
 『古事記』では、イザナミとイザナキという夫婦の神様から数多くの神々が生まれますが、特に重要な神様は「三貴神」と呼ばれています。アマテラス、ツクヨミ、スサノオの姉弟です。アマテラスは天上世界、ツクヨミは夜の国、スサノオは海の国を支配するよう父から命じられますが、末っ子のスサノオは反抗します。スサノオは荒ぶる神様であり、アマテラスと対立し天界から追放され、地上ではオロチを退治し、冥界の神様ともなります。最も魅力的な神様ですね。
 『古事記』を現代的な視点でみると、いろいろな「楽しい疑問」がわいてきます。例えば、本当に神様も死んでしまうのか?
 イザナキが左目を洗ったときアマテラス(太陽)が生まれ、右目を洗ったときツクヨミ(月)が生まれ、鼻を洗ったときにスサノオが生まれるのですが、なぜ鼻なのか?
 とりわけ興味深いのは食べ物の神様でしょう。食物神オホゲツヒメが殺害されると、そこからまた食物が生長してくるのです。これこそ神話の論理だと思います。
 古典の作品には豊かな世界観と、現代のファンタジーにもつながる創造性がつまっています。

◎古典文学研究ーー葛綿先生は『源氏物語』の専門家!
 『源氏物語』の研究では、物語の登場人物について調べています。最も屈折した人物は、物語の後半、光源氏亡き後に主人公となる薫(かをる)でしょう。世間では光源氏の息子とされるのですが、実は違うのです。宇治に住むに大君(おほいきみ)に恋をしますが、姫君は亡くなってしまいます。薫はその亡くなった姫君そっくりの女性に再び恋をするのですが、うまくいきません。なぜでしょうか。あるいは当然と考えるべきでしょうか。
 宇治の姫君にそっくりの女性は浮舟(うきふね)と呼ばれています。思慮深い薫に惹かれつつ、情熱的な匂宮(にほふみや)にも惹かれるのですが、板挟みに苦しんで宇治川に身投げます。僧侶に助けられた浮舟はこの後どのように生きるのでしょうか。
 『平家物語』の研究では、様々な武士の生き方について考えています。横暴ぶりが非難され熱病で苦しんで死ぬ平清盛、平家軍を破るが都の人々に笑われる木曾義仲、平家追討を果たすが兄の頼朝と仲違いする源義経などです。
 父の横暴を制止しようとしていた清盛の長男、重盛は父よりも先に亡くなります。清盛死後は息子の宗盛が指揮を執りますが、リーダーには向いていません。それよりも格好いいのは弟の知盛です。「見るべきほどのことは見つ」と言って、壇ノ浦で海に身を投げるのです。この世で見届けるべきことはすべて見届けたというのは『平家物語』で最も有名な台詞です。

◎日本文化研究ーー現代のサブカルチャーにもつながる面白さ
 絵巻物の研究では、様々な形象とその意味について考えています。ゼミでは、動物を描いた『鳥獣戯画』、物語を描いた『源氏物語絵巻』、説話を描いた『信貴山縁起絵巻』『伴大納言絵巻』などを取り上げてきました。
 そのほか歌舞伎や映画を研究テーマにしている学生もいます。演劇、絵画、映像にどのような文化が反映しているのか、あるいはどのような文化を創出しているのか。興味深い文化研究となります。

◎受験生のみなさんへのメッセージ
 古典文化を中心に、大学生らしい教養を深めたい人にピッタリのゼミです。読書を通して、古典の世界の住人になる、受験生の皆さんには、日本文化学科に入学して、そんな豊かな体験をぜひ大学時代にしてほしいなと思います。

※写真は葛綿先生の古典文学や現代詩をテーマにした著書、ゼミでの美術館見学の様子などです。