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日本文化学科のブログ

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【連載:研究室に行ってみよう⑨「わたし」の言葉について考えるゼミ。下地賀代子先生インタビュー】

研究室・ゼミナール紹介
日本文化学科には12名の専任教員がいて、それぞれの研究室で卒業論文の指導を行うゼミナールを開講しています。
日本語学と琉球語学の両方を担当されている下地賀代子先生の研究室は、日本文化コース、琉球文化コースの横断的な研究ができる、学科内でも人気の高いゼミの1つです。
大学で「ことば」について学ぶとはどのようなことなのでしょうか? 研究室のテーマについて下地先生に語っていただきました。
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◎あなたが話す言葉は何語ですか? 
 あなたが普段話す言葉は何語かと聞かれたら、多くの人は「日本語」だと答えるでしょう。しかしそれは、あなたのお父さんやお母さん、お祖父さん、お祖母さん、他にも、他県からきたお友達、テレビのアナウンサーの方が話す言葉と、全く同じでしょうか。
 日本語とは、古くから「日本人」によって「日本」で話されてきた言葉の総称です(この「日本」「日本人」には注意が必要だけど、難しいのでここでは省略)。あなたとあなたのご家族の話す言葉、北海道から鹿児島、沖縄までさまざまな地域に住む人たちが話す言葉、似ているけれど少しずつ違うこれらをまとめて「日本語」と呼んでいるのです。

◎「わたし」と「あなた」の言葉が違うわけ 
 どうして同じ「日本語」なのに、違っているのでしょうか。それは、言葉というものが「変わる」もの、また「生まれる」ものだからです。その「変わる」「生まれる」要因にはさまざまなものがあります。
 まず時代の移り変わり、つまり時間的要因が挙げられます。時代が変わると、当然社会も、人々の考え方も変わります。その変化が、そこで話されている言語にも影響するわけです。例えば、「駅」という語は元々馬の乗り換えや旅行者などが休憩する場所を意味していました。ですが、明治時代に鉄道が導入されたことによって人々の移動手段が変化し、「駅」という語も列車が止まる鉄道駅を指すようになりました。
 また、地理的な条件の違いという空間的要因があります。距離はもちろんですが、山や河、海などによる隔たりも、車も電車もなく、飛行機なんてとんでもない!という時代の人々にとって、とても高く大きな「壁」でした。その「壁」のあちら側とこちら側で言葉がそれぞれに発達・変化していき、いわゆる「方言」となっているのです。
 それから、高校生の皆さんにも身近な要因を紹介します。それは、心理的要因と呼ばれるものです。例えば、社会的集団における「仲間意識」による言葉の変化がこれに当たります。いわゆる「若者ことば」に顕著で、一時的な流行語としてすぐに消えてしまうものがほとんどなのですが、中には「ら抜き言葉」と呼ばれる現象のように、日本語の体系全体に影響を与えるほどの大きな「変化」もあります。最近のもので言うと、「全然」や「やばい」など、意味が大きく広がっている語があります。これらは「ら抜き」同様、日本語の「変化」として定着しそうな勢いを見せています。

◎言葉の豊かな「ヴァリエーション」を知ろう!
 下地ゼミは、「日本語」「琉球語」を中心に、言葉のさまざまな姿=ヴァリエーションを研究するゼミです。沖縄の言語状況はとても複雑で、お祖父さんやお祖母さんの話す各地の伝統方言(シマクトゥバ)にウチナーヤマトゥグチと呼ばれる沖縄的共通語、それから若者世代の話す沖縄的若者言葉、もちろん日本語共通語も話されています。
 そして、それぞれの中身も一様ではありません。私たちを取り巻くこのような言語状況を知り、その一つ一つについて考察を深めていくことを目指しています。