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日本文化学科のブログ

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【ことばのスペシャリストになるには? 言語学・日本語学の魅力をご紹介します!】

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日本文化学科のカリキュラムの中心は「言語学」「日本語学」です。
日本文化学科では、「ことばのスペシャリスト」を目指すカリキュラムとも表現していますが、「ことばを学ぶ」とはどういうことなのでしょうか?

日本文化学科の受験を考えている皆様に向けて、在学生(2年生)の3名が、日本語担当の下地賀代子先生の研究室に行ってうかがったお話をレポートとしてまとめてくれましたのでご紹介します!



―― 日本文化学科で学べる「日本語学」「言語学」ってどんな学問なんですか? 高校までの「国語」とどう違うんですか?

下地先生 「日本語学」「言語学」と言って色々なジャンルがあるので、いくつか例を紹介してみますね。高校までの国語で「文法」を勉強しますよね? 大学でも「文法論」という科目がありますが、高校のようにただ活用形を覚えるというような授業とはちょっと違うんです。例えば、「駅で先生に会った」という文と「駅で先生と会った」という文があるとします。2つの文の意味の違いを説明するときに、文法論の知識が必要になってきます。

―― 「先生に会った」と「先生と会った」の違いですか? 「先生に会った」というのは偶然会ってしまった感じがします。なんとなく、ですが。

下地先生 そうですね。「格助詞」の用法の違いによって説明できるのですが、「に」は「動作の向かう相手」を表すのに対して、「と」は「一緒に動作を行う相手」を表します。だから、「先生に会った」と言うと、動作の主体は「私」で、「先生」は直接には関係しませんから、偶然出会った、というニュアンスも生じてきます。一方、「先生と会った」と言うと動作の主体は「私」と「先生」の両方になるので、約束して駅で待ち合わせた、という意味になります。このように、格助詞の違いによって、表される出来事が異なってくるんですね。言葉の仕組みを学ぶのが大学での「文法論」です。

―― 他にも面白いジャンルはありますか?

下地先生 「語用論」も面白いですよ。突然ですが、レストランで食事をしている時に、「その塩とれる?」と言われたら、どうしますか?

―― 普通に塩を取って渡します。「どうぞ」って。

下地先生 そうなんです。でも、その会話って、よく考えたらどこかおかしくない? 文字で書いてみると、「その塩とれる?」→「どうぞ」 となります。

―― ん? どういうことだろう… あ、そうか! 塩を取ることができるかどうかを質問されているのに、「どうぞ」って答えている?

下地先生 そうなんです。「その塩とれる?」は「YES・NO疑問文」だから、その答えは「はい」か「いいえ」じゃないとダメですよね。でも私たちは「はい」とも「いいえ」とも答えずに、自然にそれを「依頼」だと受け止めて、塩を「どうぞ」と渡してしまうんです。こんなふうに、私たちの会話は文字とは違う意味で成り立っている場合もかなりあります。語用論では、こうした不思議な現象を研究していきます。

―― 「認知言語学」というのも聞いたことがあるのですが、どんな学問なんですか?

下地先生 認知言語学というのは、人間がもっている認知能力と関わらせて言語を研究する学問です。例えば、「昨日、○○さんとお茶に行った」と聞いて、どんな場面を想像しますか?

―― そうですね…。○○さんと喫茶店に行った場面を想像します。

下地先生 その喫茶店では何を飲んだと思う?

―― ジュースとかコーヒーかなぁ。これも、なんとなくですけど…。

下地先生 そうですよね。でも、やっぱり何かおかしくないですか? 「お茶に行った」と言っただけなのに、「ジュースとかコーヒーを飲んだ」ことになっていますよね。「お茶」は飲み物の種類の1つなのに、会話の中では「ジュースやコーヒー」の総称になっています。「飲み物を飲みに行った」なら、ジュースやコーヒーが入るのは分かるけど、それらと同じ飲み物の種類の1つに過ぎない「お茶」が代表のように扱われるのは、本当はすごく不思議な現象なんです。これは「シネクドキー」という比喩の一種で、狭い範囲を指す語で広い意味を表しています。こんなふうに認知言語学では「比喩」の世界も研究対象になります。他にも、本当は羽が回っているのに「扇風機が回る」と言ったり、運転手の運転の仕方が危ないのに「トラックが危ない」と言ったり。こうした言語現象も全て「比喩」の理論を学ぶと説明できるようになります。

―― 日本語学って、なんだか心理学みたいですね。



下地先生 いま紹介した領域の他にも、意味論や若者言葉や方言などを研究する「社会言語学」とか、海外の言語と日本語を比較する「対照言語学」とか、談話の分析などを行う「応用言語学」とかもあります。「音声学・音韻論」も面白いですよ。日本語にはまだまだ解明されていない不思議な点も多いので、一緒に日本文化学科で「ことば」を極めましょう!