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日本文化学科のブログ

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【1年生向けの夏休みブックガイド『にちぶん羅針盤(こんぱす)』が完成しました!】

1年生、頑張ってます!
日本文化学科の1年生全員が受講する必修科目「リテラシー入門Ⅰ・Ⅱ」では、1年間をかけて、「アカデミックスキル」を身に着けるためのトレーニングを少人数クラスで実施しています。
その中心は読む・書く・話す・考えるといった、日本語運用のトレーニングで、前期は要約文の書き方やデータの読み取り方に基づく批評文の書き方、さらには、レポートの書き方などを習得します。

夏休みを目前に控えたこの時期には、毎年、1年生全員に「ブックガイド」が配布され、ガイドブックの使い方や、夏休みに是非読んでほしい先生方の推薦書の紹介、書評の書き方についてのレクチャーを行っています。





このブックガイドのタイトルは『にちぶん羅針盤(こんぱす)』。
2023年号にも、言語学・文学・多文化・図書館・国語科教育・日本語教育などなど、専門分野の面白さを満喫できるような、各先生による入門書の紹介文をはじめとして、先生たちの大学1年生のころを振り返ってのエッセイなども収録されています。また、ブックガイドの後半には、昨年度の図書館書評コンテストの優秀作や、2年生によるレポートコンテストの優秀作も掲載されていて、これからの1年生にとって、まさに「羅針盤」になるような盛りだくさんのコンテンツとなっています。

図書館学担当の山口先生は次のような読書と大学時代をめぐるエッセイを書いてくれました。

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「読書をしなさい」 山口真也

 コロナ、コロナと言っているうちに3年もの時間が過ぎて、気が付けばもうすぐ50歳。右上の写真の人は45歳くらいで時間が止まっていますが、思いがけずこんな年齢になってしまいました。
 ネットを調べると、50歳からは人生の後半戦、豊かに過ごすためにこうしなさい、ああしなさい、というキラキラしたアドバイスがやたらと出てきます。例えば、「楽観的に生きなさい」「好きなことだけしなさい」「転職しなさい」「料理をしなさい」「ゴルフをしなさい」「肉を食べなさい」…などなど。そしてもちろん「読書をしなさい」も出てきます。
 図書館学の先生であり、図書館長を務めている私からすると、50代にもなっていまさら読書?、という気もしますが、50代になって、子育てもひと段落して、出世競争も結果が見えてきて、私生活にも仕事にも少し余裕ができた時間をこれまでできなかった読書にあててみましょう、ということなのかなとも思います。しかし、これまで生きてきた50年を振り返って、人生の中で一番時間の余裕があったのは【大学生時代】だと思うのです。
 私は、大学のころ、毎日日記をつけていました。その日記の最後の欄には、その日に読み終わった本(主に小説)をメモしていたのですが、読み返してみると、毎日少なくとも1冊以上、多い日は3冊もの本を読んでいるのです。そんなにたくさんの本を買えるわけがないのですが、街の図書館には借りても借りても、読んでも読んでもまだまだたくさんの本がありました。通っている小さな大学の図書館には、文学全集がたくさんあったので、背伸びして難しい文学作品にもチャレンジできました。フィクションの力というのは実に絶大で、様々な時代や世界に連れて行ってくれますし、変化に乏しい日常を忘れさせてくれたりもしました。
「小説」とは、まさに文字通り、小さな説を唱えるだけのもので、大げさなテーマがあるわけでもなく、どこにでもいる人間の日常を切り取ったものだと聞いたことがあります。社会問題を取り上げたような専門書でもなければ、将来のために読むテキストでも、研究のために読む学術書でもないので、役に立たないと言えばそれまでのものなのかもしれません。しかし、どこにでもいる人間のせせこましいありふれた日常を描くからこそ、大学当時の、社会に出る前の、「まだ何者でもないみじめな自分」を勇気づけてくれていたようにも思います。
 このエッセイを書きながら、大学時代は本当に贅沢な、大事な時間を過ごすことができた4年間だったなぁと振り返って思います。夜遅くまで働いて学費を捻出してくれた両親にも改めて感謝の気持ちが沸いてきました。
 私が大学生の頃とは違って、いまの大学生は勉強にボランティアにアルバイトに就活に、かなり忙しいのかもしれません。でも1年生のこの時期はまだまだ将来のことはそれほど根を詰めて考えなくてよいでしょう。人生の中で一番時間を持て余すのが大学1年生の夏休みなのかもしれません。このブックガイドをもってぜひ図書館に行って本を手に取ってみてください。(2023.4.1)
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日本文化学科にはなんと(大学生ですが)夏休みの宿題があって、1年生の課題は「書評の執筆」です。
今年もたくさんのチャレンジを期待しています!