文字サイズ

日本文化学科のブログ

ブログ

【2年生必修科目「アカデミックライティング」、仮説検証型レポートが完成しました!】

おもしろ授業
日本文化学科では2年生向け必修科目である「アカデミック・ライティング」という科目で、前期期間中の4月から8月上旬までの約4か月をかけて、卒業研究に向けて、調査研究の方法論や学術的な文章の書き方を実践的に学んでいます。

この授業の最終目標は、3年生から本格的に始まる卒業研究に向けての「プレ卒論の執筆」ということで、クラスごとに決まっている大きなテーマの下で、学生一人一人が自分自身の興味関心にあわせて「問い」を考え、「仮説」を立て、その「検証方法」を検討し、さらにその分析結果をまとめた学術論文型のレポートを書き上げていく、という課題に取り組んでもらっています。

山口先生が担当したクラスの共通テーマは「不適切にもほどがある! 1980年代の文化的コンテンツ」。
テレビ番組や漫画、アニメ、歌謡曲など、日本文化学科が学問の対象としている言語文化・表現文化のコンテンツを対象として、現代の視点からみると、ジェンダー平等に反する、LGBTQ差別がみられる、暴力的・残酷すぎる、子どもへの悪影響、といった問題のある表現がどのくらい含まれているのか、を様々な方法で観察して分析しよう、という課題です。

大学に入ってから、レポート課題は各授業でありましたが、仮説検証型のレポートを書くのは多く学生が初めてということで、慣れない作業に苦労するところもたくさんありましたが、日本文化学科独自の「ライティングセンター」を利用しつつ、なんとか受講生全員が色とりどりのレポートを書き上げることができました。

今年度の授業で学生たちが取り組んだテーマは…

「ドラマからみるジェンダーギャップ」
「「8時だョ!全員集合」にみるバラエティ番組の放送倫理:2000年代以降の事案と比較して」
「1980 年代の歌謡曲の歌詞における女性を表現する言葉の変化」
「1980年代のバラエティ番組にみる同性愛者差別」
「バトル漫画に見る女性キャラクターの役割の変化」
「1980年代の小説に登場する女性名にみる当時の女性の理想像の反映」
「不良マンガにおける暴力表現の正当化:1980年代作品の友情や憧れによる美化」
「スポーツ漫画における体罰表現・スパルタ表現」
「歌謡曲の二人称にみる女性蔑視」
「かちかち山」からみる子供向け昔話絵本の暴力・残酷表現について」
「1980 年代女性アイドル曲に潜む性的ハラスメント」
「学園ドラマにみられる不適切な指導」
「方言を話す漫画のキャラクターにみる差別」
「少年漫画にみる二次元児童ポルノ」
「歌詞を日本語翻訳する際のステレオタイプに沿った表現について:1980年代の英語圏の歌謡曲とその日本語翻訳を比較して
「歌謡曲の歌詞からみる1980年代の不倫の捉え方」
「ヤンキー映画における暴力表現J
「POP の歌詞にみるジェンダー・バイアス」
「部活動における 髪型 の変 化について」
「長期放送アニメにおける暴力表現の変遷: 放送初期と現在の描写を比較して」
「ディズニー映画から見るジェンダー・バイアス」
「広告表現にみるジェンダー・バイアス」
「日本語教材におけるイラスト表記」
「学園ドラマに見るあだ名の使用状況:「3年B組 金八先生」を視聴」
「短編小説にみる名づけの研究」
「アイドルのプロフィールにみる個人情報の記載状況」
「学校教育における体操服の変化:学校の記念誌を比較して」
「英語の教科書における人種差別的表現の実態:1980年代と2020年代の教科書を比較して」

などなど。
入手がしやすい歌謡曲の歌詞にみるジェンダーバイアスや恋愛観、男女格差などをテーマとする学生が多い一方、CMや学園ドラマ、不良映画、アイドルのプロフィール、英語教科書、日本語教材、昔話絵本、バラエティ番組などなど、様々な分野のレポートが出そろいました。

調査結果を一部ご紹介すると…
「アイドルのプロフィールにみる個人情報の記載状況」のレポートでは、1980年代にデビューしたアイドルタレントのデビュー曲のレコードジャケットに記されるプロフィール情報では、生年月日はもちろん、身長、体重、BWH、出身地などの情報が当然のように公開されている状況が確認できます。一方、2000年代以降のアイドルのプロフィールでは、体重、BWHなどの体形情報は完全に非公開となり、身長も明かされないケースが増えていきます。


 (※城之内早苗さんのデビューは1986年の間違い)

「広告表現にみるジェンダー・バイアス」では、車のCMや食器用洗剤のCMに注目して、男性、女性のどちらが登場するか、1980年代と2020年代のCMを比較した結果がまとめられています。食器用洗剤は最近のCMでは、男性が登場したり、男女が両方登場したり、その男女も必ずしも夫婦ではなく、姉弟だったり、と多様な家族観を意識した表現になっているように思えますが、1980年代のCMをYOUTUBEで調べた結果をみるといかのように、登場するのはすべて女性、しかも主婦的な若い女性、という結果が示されています。1980年代は食器を洗う=家事は若い女性の仕事で、CMに描かれるような幸せな生活の象徴は、女性が家庭に入って家事をすること、という意識があったことがわかります。



「英語の教科書における人種差別的表現の実態:1980年代と2020年代の教科書を比較して」は、中学校の英語教科書に出てくる外国人の人種に偏りがないか、を調べたものです。英語を使う=白人、アメリカ人、というわけではありませんが、なんとなく、1980年代の日本の教科書には白人が多く描かれやすいのではないか?、人種の多様性を尊重していない、差別的なイラストが多いのではないか、という仮説を立てて調べたものです。以下の2つのグラフを比較するとわかるように、仮説通り、1980年代の英語を使う外国人といえば白色人種という偏りがみられ、2020年代以降の新しい教科書では人種の多様性に考慮して、有色人種の比率がかなり高まってくる、アメリカ人だけでなく、中国人なども登場する、という変化がみられました。

 

「長期放送アニメにおける暴力表現の変遷: 放送初期と現在の描写を比較して」では、長寿アニメ番組「サザエさん」の中の、名物シーン、浪平からカツオへのお説教シーンに注目して、暴力的な行為がどのように変化しているかを調査しました。サブスクの配信では1980年代の「サザエさん」が収集しづらかったため、「サザエさん」放送開始時期にあたる1969年と、現代の「サザエさん」を比較したところ、以下のグラフのように、浪平によるお説教に伴う暴力行為は、物置に閉じ込めるといった体罰的な表現も含めて、現代の作品ではほぼみられなくなっている、ということがわかってきました。




日本文化学科の2年生は、今回のレポート作成の経験をふまえて、後期からは「ゼミナール入門」という必修科目を通して、週替わりで各研究室の学問内容をより深く学び、研究計画書を作成して、研究室の所属を決定していくことになります。

学生たちのレポートをここですべて紹介できないのは残念ですが、自分自身の興味関心をもとに「問い」を立てて、粗削りながらも、実証的な方法で仮説を検証していく、高いレベルのレポートを一人一人が楽しみながらいきいきとまとめてくれたように思います。
2年生のみなさん、卒業研究に向けて、これからもがんばりましょう!